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恋愛対象が女なのに、俺を好きだという伊野尾ちゃん。


俺が特別…。


あれ?俺、もしかして喜んでる?


男に好きだって言われたのに、嫌悪感はなかった。
でも別に俺だって女の子が好き。


伊野尾ちゃんだからなのか?
自分の気持ちがよく分からない。



この時の俺は、確かめたい気持ち半分、好奇心半分で


「1つ提案があるんだけど」


彼を傷つけることになるとも知らずに
最低な選択をした。



「お試しで俺と付き合ってみない?」



伊野尾ちゃんは、ずっと下げていた頭を勢い良く上げると、目を大きく見開いて


「は?」


と一言だけこぼして固まってしまった。


「伊野尾ちゃん、聞いてる?」


「聞いてるけど…本気でいってんの?」


「俺、伊野尾ちゃんの気持ち、別に嫌じゃなかった。むしろちょっと嬉しい、みたいな?」


俺の話を目をぱちぱちさせながら聞いてる伊野尾ちゃんは、小動物みたい。


「だから、俺も自分の気持ち確かめてみたいし、もしかしたら好きになれるかもしれないし」


「山田本当に言ってること分かってる?俺男だよ?いくらお試しって言ったって…」


「伊野尾ちゃんは俺と付き合うの嫌?」


「嫌じゃないけど…俺にとって都合が良すぎる気がする」


「嫌じゃないならいいじゃん!俺たち今日からカップルだ」


俺がそう言って笑いかけると、


「カップル…」



と、呟いた伊野尾ちゃんはみるみる顔が赤くなって、うん、と小さく返事した。


お腹空いたねと言ってメニュー表を2人で覗き込んだ。
すぐ近くに見える伊野尾ちゃんの顔はまだ赤い。
耳から首まで同じ赤。

日頃見かけることのない伊野尾ちゃんのそんな姿に俺の口角は無意識に上がっていた。

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作者名:雨のち雨 | 作成日時:2024年3月17日 23時

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