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「伊野尾ちゃん耳真っ赤、俺のこと好きなの?」
からかうように言った山田の冗談に、いつもみたいにおちゃらけて返せばいいだけだったのに。
なに馬鹿言ってんの?そんなわけないじゃん!って。
でも、言えなかった。喉に張りついたまま、出てこなかった。だって、叫んでた。俺の心がそうだよって。
「え?」
と山田から次に発せられた声は、戸惑いに満ち溢れていた。
きっと、俺の目と顔と心が、山田が好きって表しちゃってたから。
ごめんね、そんな顔させて。
ごめんね、男なのに。
せっかく一緒に頑張ってきたメンバーなのに。
「ごめん。気持ち悪がらせて。気にしないでほしい。明日から普通にするし、山田に何か求めてるわけじゃないし、山田が嫌なら話しかけないし、近づかない。本当にごめん。」
早口で言いたいことだけ言うと、俺はその場から走って逃げた。人生で1番じゃないかってくらい走った。
途中すれ違ったマネージャーに、1人で帰ると告げて、外で見つけたタクシーに乗った。
顔を見られないように、うつむくと、ポタポタと服にシミができた。
好きになって、ごめんなさい。
頭のなかはその言葉でいっぱいだった。
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作者名:雨のち雨 | 作成日時:2024年3月17日 23時