お別れした伊野尾さん ページ7
「どうしたんですか、その目…」
「へへへ、まだ腫れてますよね。ギリギリまで冷やしてはいたんですけど」
いつもとは違う苦しそうな笑顔に、こっちがつられて苦しくなる。
「昨日彼女と別れちゃいまして」
てへ、という可愛らしい仕草と違って、その目には今にも溢れそうな涙の膜が張る。
「今日、バイトお休みしてもいいですよ」
「山田さんとバイトしてる方が気分が晴れるから」
いつもはキュンとするはずの笑顔も、今はただただ切ない。
「バイト終わった後、ご飯でも行きますか?俺おごりますよ!いっぱい食べて元気出しましょう!」
いいんですか?嬉しい、と笑う伊野尾さんはやっぱり苦しそうで、少しでも元気になるなら何だってしてあげたい。
「俺、結構食べますよ?」
「好きなだけ食べてください!伊野尾さんが食べたいところに行きましょう」
食べて元気になるのなら、いくらでも出す。
それくらいしか俺にはできないから。
「山田さんみたいにかっこよくて優しかったら浮気なんてされなかったのかなぁ」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた伊野尾さん。
会ったこともない伊野尾さんの元カノにすごくモヤモヤした。
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作者名:雨のち雨 | 作成日時:2024年1月28日 16時