辛い時でも頼り辛い。<stxxx>part3

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りいぬside




さ「ジェル！」

ジ「さとちゃんこっち！りいぬも！」





いつもとは違うジェルの緊迫した声。
あの余裕そうな声の余韻は消えてる。




と、リビングから大きな音が聞こえた。




物が落ちるというより、叩きつける感じの…普段なら聞かないような。




『わっ、わかった！とりあえずリビング行けばいい！？』

ジ「とりあえず！そうすれば状況は分かるはずや！」





少し開いていた引き戸を勢い良く開けると、そこには目を見張る光景があった。








るぅちゃん、ころちゃん、なーくんの乱闘の跡。

散乱する長さも太さもバラバラな大量の針。

そしてまばらに散っている血。








るぅちゃんは右肩を引く様になーくんを押さえこみ、その目には涙が浮かんでる。



ころちゃんは唇を噛み締めて、目をぎゅっと瞑り床に散らばる針を凪ぎ飛ばしてる。



るぅちゃんに押さえられ、床の針を取ろうとしてるなーくんはあの落ち着いた彼ではなくて。





そして俺は、見たんだ。

見てしまったんだ。






なーくんの手首から肘にかけて施された、綺麗すぎるほど鮮やかな刺繍を。


花をかたどられていて、多分それは薔薇の花で。



赤い糸で縫われたそれは、滲む血によってさらに赤みを増していた。





な「返せ！針！なんで止めるの！」

る「これ以上自分を傷つけてほしくない！」

な「うるさい！」







ビクッ、と肩が揺れた。



そりゃそうだよ。

聞いてただけのはずの俺さえも身がすくんだ。



いつもかけてくれる優しい声も、牙を剥けばこれだけ恐ろしい声に変わるんだ、って知っちゃった。






る「………っ、だってっ、勝手にしろなんて言えない…！」






ツーッという擬音がつきそうな滑りと共に、るぅちゃんの服の袖から血が流れ落ちた。






良く見ると、服はところどころ切り裂かれた様に破れてる。



それは、ころちゃんも同じだった。







るぅちゃんが発した言葉を最後に、数秒とも数分とも思える沈黙が流れた。






と、おもむろになーくんの手がテーブルに伸びる。





誰一人として反応することが出来ず、なーくんはそのまま置いてあった針を手に取り自らの腕に刺した。







一瞬の間を置き丸く溢れてきた血を、何故だかとても綺麗だと思った。






な「……………………もうね、痛くもないんだよ。もうこれはね、芸術だから」









ハッと顔を上げる。









彼の目にも、涙が浮かんでいた。

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