隣の部屋のさとみくん。【すとぷり】

27日目。 ページ33

「いいの？…無理してない？」

彼が頼み込んできたというのに、渋々承諾をすれば私を気遣う声。


優しいのか、優しくないんだか…いや間違いなく前者なのだろうけど。


「いいよ、リアルな感想も聞きたいしね」


「但し、昔の絵は無しね。春斗くん専用に何か描くからさ。」


SNSにあげてたくさんの人に見てもらうのと顔の見える知人に絵を見せるのでは、話が違う。


「ほんとに？…嬉しい！」


嬉しそうに笑う彼を見て、久々に気合いを入れて描く事を決意した。


・


あの後、春斗くんは用事があると言って帰宅した。友達と打ち上げがあるそうだ。
人気者は大変だな、なんて静かになった部屋でしみじみと思った。


Twitterを開けば、数十件の通知が私の目に飛び込んできた。


Twitterの通知ってすぐ流れちゃうから不便だよね。頻繁に見ないと折角してくれた引用リツイートやRTに反応できないし。


私はTwitter廃人だからまだ消化しきれているけど、有名人は大変だろうな、なんて他人事のように思った。


「…？すとぷりって、何？」


質問箱を開いて絵のリクエストを確認している時,多く目に付いたその単語。


軽くエゴサしてみると,有名な歌い手グループの様だ。


中には見た事のあるキャラデザの子もいて、この子が莉犬くんか…なんて感心した。


絵を描くならば,本人達をよく知らないなんて許されない。何より,私のプライドが許さない。


Google先生に聞く前に,付き合いの長い友人にLINEを入れる事にした。



Aねぇ、ゆい、すとぷりって何?
ゆいえ、A、すとぷり知らないの?
Aうん、知らない。質問箱にリク来てたから描きたいんだけど… ちょっと教えてくれない?
ゆい全然いいよ!すとぷりはね…


ゆい…こんな感じ。わかった?
Aなるほど、ありがとう。
ゆいあ、丁度今メンバーのるぅとくんが配信やってるみたい。見に行ってみれば?
Aうん、覗いてくるね。



友人とのLINEを閉じると、私は一目散にツイキャスを開いた。


ゆいから聞いて大体の事は把握したが、自分の目で本人を認識して、どういう方なのか理解したい。


ツイキャスを開けば、おすすめの1番上に存在する
"るぅと@すとぷり"の文字。閲覧数は2万超。



…この時間帯にこの閲覧数って、余っ程人気なんだな。



イヤホンを耳にはめ、耳を澄ました。

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