28日目。 ページ34
もしここでるぅとさんの配信を聞いていなかったら私の運命が大きく変わることも無かったかもしれない。
「こんばんは〜るぅとです!」
「え。」
思わず耳を疑った。愛用のイヤホンから響くこの声は。 確実に、数分前に聞いた彼の声。
"わこるぅと!"
"るぅとくんこんばんは〜!!"
流れの早いコメントを少しずつ拾いつつ、彼は話を進める。
「はると、くん…?」
驚き戸惑う私を他所に画面の向こうの彼は淡々と言葉を発する。
一緒に居すぎたせいか、今彼がどんな顔でこの話をしているかがわかってしまう。
「今日は大学のお友達の家に遊びに行ったんですけど…
"るぅとくん友達いたの?"なんて巫山戯たコメントに反応して、ちょっところちゃん!と軽く怒る彼は、正しく普段の私と彼の様で。
「友達とハーゲンダッツを競ってゲームしてたんですけど、めちゃめちゃ強くて、僕全然勝てなかったんです。ころちゃんよりも全然強くて。」
その瞬間、疑惑が確信に変わってしまった。
声が似てる人なんて探せばいくらでもいる。
だから、この声の主は赤の他人だって、私の知ってる彼ではない、そう思いたかった。
…あぁ、これは間違いなく春斗くんだ。
今日の出来事をさも当然のように語り出す彼を見て、冷や汗が止まらなかった。
知ってしまった、彼の大きすぎる秘密。
大して有名じゃない絵師の私と、何十万のリスナーを引き連れる有名な活動者の彼が同じ大学の同級生で、お互いの家を行き合う程の友達だなんて。この事実がリスナーにバレたら、どうなってしまうのか。
答えは簡単、両者共に活動停止だ。
私はまだ個人の活動だからいいものの、彼はグループの1人。もしこの事実が公の場に晒されてしまったら、今後のグループの活動にも大きく関わってしまうだろう。
知らなければ幸せだったのに、なんて後悔しても時すでに遅し。
私が彼の正体を知っている事がバレてしまったら、彼は確実に私から身を引くだろう。
それはそうだ、彼はれっきとした活動者なのだから。
この秘密が、誰にもバレなければいい。
私が上手くやれば誰も傷つく事なんて無いんだ。
未だにカタカタと震える体をギュッと抱き締めて、大丈夫,と自分に言い聞かせる。
あぁ、こんなにも。彼との日常が崩れる事が、怖くて仕方ない。
私がどんな気持ちでこの放送を聞いているかも知らずに、淡々と幸せそうに言葉を紡ぐ彼が、少しだけ憎らしかった。
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チョコ - めっちゃ好きです(( (2020年11月9日 1時) (レス) id: b8ba54da77 (このIDを非表示/違反報告)
ももんが(プロフ) - めっちゃおもしろいです!いい感じにシリアスだったり、ころちゃんの猿キャラだったり、キュンキュン要素だったり…最高です!!さとみくん推しで見に来たんですがこれはるぅとくんオチめっちゃ気になります…これからも期待してます!ありがとうございます!! (2020年3月15日 3時) (レス) id: 43039e50b7 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - ゆらさん» 返信遅くなりすみません!表現力が乏しいので分かってもらえるか心配していたので良かったです〜! ありがとうございます!励みになります (2020年2月14日 1時) (レス) id: d619556bbc (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 愛由さん» 遅くなりすみません!ゲーム上手い組のさとるぅと凄く好きなので贔屓してます笑 読んでくださりありがとうございます。 (2020年2月14日 1時) (レス) id: d619556bbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 名前も出されていないのにどのメンバーか分かってしまう私はもはや病気です。。。これからも頑張ってくださいね! (2020年1月2日 23時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑞乃 | 作成日時:2018年12月16日 23時