22日目。 ページ26
続く沈黙の中。
ゆったりとしたBGMが店内に鳴り響く。
向き合う空気との差を感じて、私達だけが全く別の異世界へと弾き飛ばされたような気分になる。
彼の表情からは未だに何も読めない。
「冗談だよ。」
不意に彼が口を開いた。言葉を、紡ぐ。
「…びっくりしたじゃん。」
「だって本当にかっこよかったんだもん。」
「それはどーも。」
彼は何が言いたげな顔をして、私から目を逸らした。
正直、自惚れてしまいそうだった。
生憎私は少女漫画でよくあるようなド天然女子ではない。惚れたと言われて自惚れない方がおかしいじゃないか。
今だって、紅潮する頬を必死に冷まそうと必死なのだ。普段使わない脳みそをフル回転させて話題を考える。彼のペースに、これ以上私を乱されてはいけない。
ふと、甘ったるい匂いが鼻を掠めた。
匂いの元へ視線を向ければ、制服に身を包んだ女子高生二人が談笑しながらクレープを口いっぱいに頬張る姿が視界に入る。
"そうだ、私達はクレープを食べに来ていた"
「クレープ、頼む?」
「頼む!!!」
無事に打開策を見つけ、彼を引き込むことに成功する。
目をきらきらと輝かせる彼に、一瞬左右に揺れる尻尾が見えた気がした。犬か。
数分前とは別人のようにコロコロ表情を変える彼を見て、心底安堵した。
「こちら、メニューになります。」
気の利く素敵な店員さんが私達にメニューを差し出す。
渡されたメニューを2人で凝視する。
一面に並んだ色とりどりの可愛らしいクレープはどれも魅力的で食欲をそそるものばかりだ。
チョコ、イチゴ、バニラアイス、、どれも目が離せない。値段に差があれば良かったのだが全て同額の540円で、決め打ち出来ずにいた。
メニューと睨めっこを初めて数分。
私に救いの手が差し伸ばされた。
「Aちゃん、何と何で迷ってるの?」
「んーとね、イチゴとチョコ…」
「どっちも美味しそうだもんね…」
「すみません、チョコとイチゴ1つずつお願いします!」
思わず耳を疑った。
私よりもとっくに先にメニューを閉じていた彼はきっと、バナナクレープを頼む筈だった。
大学であんなに幸せそうに話していたのに、どうして。
「春斗くん、バナナじゃなくていいの?」
「僕チョコも好きだから大丈夫。苺と半分ずっこにしよう?」
彼は天使のように愛くるしい笑顔を放つ。
「え、いいの…?」
「うん、さっき助けてくれたし。」
982人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「すとぷり」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョコ - めっちゃ好きです(( (2020年11月9日 1時) (レス) id: b8ba54da77 (このIDを非表示/違反報告)
ももんが(プロフ) - めっちゃおもしろいです!いい感じにシリアスだったり、ころちゃんの猿キャラだったり、キュンキュン要素だったり…最高です!!さとみくん推しで見に来たんですがこれはるぅとくんオチめっちゃ気になります…これからも期待してます!ありがとうございます!! (2020年3月15日 3時) (レス) id: 43039e50b7 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - ゆらさん» 返信遅くなりすみません!表現力が乏しいので分かってもらえるか心配していたので良かったです〜! ありがとうございます!励みになります (2020年2月14日 1時) (レス) id: d619556bbc (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 愛由さん» 遅くなりすみません!ゲーム上手い組のさとるぅと凄く好きなので贔屓してます笑 読んでくださりありがとうございます。 (2020年2月14日 1時) (レス) id: d619556bbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 名前も出されていないのにどのメンバーか分かってしまう私はもはや病気です。。。これからも頑張ってくださいね! (2020年1月2日 23時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑞乃 | 作成日時:2018年12月16日 23時