【HQ】溢れそうでも、零れそうでも、

内心 ページ13

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「……あ、りがとう…」


瀬名の小さすぎる声を聞いて、やってしまったと気づいた。

漢字の読み方がどうとかで話したときのお礼とは違いすぎるし、なにしろ、顔が真っ赤。



漢字に関しては大したことじゃなかった、けど、

そのあとなんとなく、悩んでる瀬名を見てて、＿＿自分でもさすがにベタ惚れかよって思う＿＿ただ、ごみに気づいただけだった。



ごみついてる。

一言だけで、よかったはずだ。



そりゃ、男子高校生。一番お盛んな時期だ。俺の場合、主に頭ん中が。

もちろん触りたいとか思うけど、俺がやったらさすがにあれだ、引かれるどころの騒ぎじゃねえし、そうなったらいろいろめんどくさい。特に侑。




一言だけで、よかったはず、だ。

黒板と、教科書とノート、行ったり来たりする視線をちょこっとだけ俺に向けさせて、一言言うだけで、よかったはずだ。




気づいたら、という言葉がよく似合う。



まさに、そんな感じ。
こういうときに使うんだなとまで思う。




「……あ」




やっと出た声は、乾いていて、
急な行動に対しての謝りすらも言えなかった。

うわ、マジで俺なにしてんの。



「……す、角名くんそういうことは好きな、子に…」
「……」




お前だよバカ。

そんなこと言えるわけもなく、「もー、ドキドキしちゃったじゃん」と前髪を触る瀬名を、やっぱりちらちら、と見ることしかできなかった。


………正直、お前よりも俺がヤバい。
俺だって自分でやったことにかなりキてるし、お前のその反応が煽りにきてる。


……瀬名に見られたら「自分でやっておいて照れないで！」なんて言われるくらい、耳が熱を持っているのがわかる。


はあ、マジかよ、バカみてえ。

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