君の声が聴きたい② (ページ5)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:5,989 hit

贈り物ページ5

そこからは彼女ご希望の冷やしパインやら、ワッフルやらまぁ、食べ物のある出店だけを回った。

『よぉ食べるな、キミ』

座って唐揚げを食べている彼女の横に座りそう言った。

『文化祭の食べ物ってなんか特別感あって好き』

メッセージにはそう書いてあった。

『……。まぁキミが楽しいならええけど。』

そこから彼女が食べ終わるまで無言で目の前を横切っていく人たちを見ていた。

ちょんちょんと肩をつつかれ彼女の方を見る。

『ちょっとお手洗い行ってくるね。』

携帯にはそうメッセージが送られていた。

『ほんならボクそこにいるから』

そう言って手芸部の教室を指差す。
コクリと頷く彼女を見送ってから腰を上げた。

教室に入ると、高校生が作ったとは思えないほど精巧なアクセサリーや小さなぬいぐるみがたくさんあった。

その中に、黄色いリボンのついたバレッタを見つけた。

(黄色。あの子に似合いそうやな。)

以前ユキちゃんに、アクセサリーは贈るものや、モチーフによって意味が違うんだと言われたことがある。

(髪留めは確か……『人から羨ましいと思われるような愛』とか『自分の存在を周囲にアピールする』とか言ってたかな。リボンは絆とかそんなんだった気がする。)

贈り物に意味なんか込めてめんどくさいと思ったが、彼女はそういう情緒あるものは好きそうだなとも思った。

(あげて、みるか。)

数十分悩んだ末にバレッタを手に取った。

会計を済ませて教室を出るが、彼女が一向に戻ってこない。

(変な奴に絡まれてないやろな。)

心配になり、彼女と別れた場所から一番近くのところへ向かった。

『あ、翔にぃちゃん！』

急に聞こえたユキちゃんの声に驚き、辺りを見回す。

そこにはユキちゃんと叔母さん、そして、彼女が居た。

慌てて、先ほど買ったバレッタをポケットへ押し込む。

『なんで、おるん。』

『ユキが文化祭行くんやって駄々捏ねてね、連れてきたらたまたまAちゃんに会ったのよ。』

『そうですか、てゆうか、Aさん、連絡くらいしてもらってもええかなぁ？』

『あっ』という顔をして、しゅんとしてしまった。

『ー心配するやいの。』
小さな声でボソっと呟いた。

『？』
聞こえてなかったのか首を傾げる。

『なんでもないわ。』

『翔にぃちゃん、Aさん！写真撮ろ！』

『えぇ、嫌やわ、2人で撮りぃや。』

『やーだー！3人で撮る～！』

『あぁ～～、わかったから騒がんといて。』

諦めて3人で写真を撮ることにした。