君の声が聴きたい② (ページ1)

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文化祭準備ページ1

季節は10月。
そろそろ文化祭が始まろうとしていた。
こちらとしては、やる気のないものに精を出す気はさらさらないが、彼女は楽しみにしているようだった。

『そろそろ、文化祭だね！楽しみだなぁ。文化祭って準備の期間も楽しいよね。』

なんて、帰り道に楽しそうに言うから

『1年は出店ないんやし、ボクらのクラスはただの休憩所なんやから、楽しいもなにもないやろ』

と、素っ気なく返す。

『そんなことないよ、飾り付けとか楽しいでしょ？部活の方は出店あるんだし』

そう、自転車部は毎年、女装カフェなんてくだらないものやっているらしい。
ボクは絶対やらん言うて裏方というか、料理担当やけど、彼女はやる気満々だ。

(まぁ、料理担当って言っていいのかわからんようなんもんやけど。)

最初は、メイド服というのを彼女が着るのを断固反対した。建前としては声が出ないからだったが、本当は彼女のそんな姿を他の奴らに見せたくなかった。
ただ彼女がどうしてもと引き下がらないので、惚れた弱みというものか、彼女のやりたいことを制限できなかった。

(悪い虫がつかんとええんやけどな)

そんな悩みを抱えつつ準備期間に入った。
各々が画用紙やダンボールに色を塗り、型を抜き教室に飾り付けていた。
絵の得意な彼女はあっちこっちに引っ張りだこだ。

(なんでそんな張り切るのか意味がわからん)

そう思いながら言われた作業を淡々とこなしていく。
すると彼女が寄ってきて、手伝うと言って、一緒に色を塗り始めた。

『他のとこ手伝わなくてええの』
と聞いたところ、後は色塗るだけだから誰でもできるだそうだ。

そこからは黙って2人で作業をした。
騒がしい教室で彼女だけはとても静かだった。
彼女が作業の手を止め、スケッチブックに文字を書き始めた。

『御堂筋くんは当日誰かと回る予定ある？よかったら一緒に回らない？』

てっきり友人たちと回ると思っていたから驚いた。

『お友達はええの？』

『みんなも部活の出店あるから、時間がほとんど合わなくて。ちょっとは一緒に回れるんだけど、大体は1人になっちゃうの。だから、御堂筋くんさえ良ければっておもったんだけど。』

当日は適当に過ごそうと思っていたが、
思わぬ誘いに心が弾んだ。

『別にええよ。』

(一緒におったほうがザク共に目ぇつけらずに済むし)

『A～、ちょっとこっちきてや～』

友人に呼ばれ彼女が離れていく。
隣に居なくなったのを少し寂しく思いながら、自分も作業に戻った。