step by step (ページ14)

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自粛期間 : 悪いことページ14

宣言の発令によって、MIU404の撮影が止まった。
もうひとつの現場は撮影自体が始まっていなかったおかげで事実上の白紙状態。
モデルの仕事も延期が決まって、目処が立っていない。

こつこつ積み重ねてきた仕事が突然全部なくなってしまう日がやってくることなんて、思ってもなかった。

当たり前にやってきていた明日が来ないなんて。

悪いことは続くもので、終わりの見えない自粛期間に入ってすぐに私は体調を崩した。
このタイミングでの発熱は疑わしいものしかないからやめてほしいのに。
マネージャーと一緒に向かった病院では、疲れが出ただけだと診断されたけれど、念のために受けた検査の結果次第では…と思うと、怖い。

「一応、状況も状況だから、Aもあまり他言しないようにして。信頼出来る人だけにしなさい。伝えるべきところには私から連絡しておくから」
「…迷惑かけて、ごめんなさい」
「ちょっと疲れただけでしょ。最近休みなかったんだから、休めば治るよ。1人で平気？」
「…うん」
「結果わかったらすぐ連絡するからね」

しばらくの間家に引きこもっていても大丈夫なように、買い込んだ食料と私を家まで送り届けたマネージャーは、事務所に戻るのかそのまま帰って行った。

家で1人になった私は、スマホを片手に持ったまま、ベッドの上に寝転がる。
熱っぽい息を天井に向かって吐き出した。

もし、この結果が陽性だったら、どうなってしまうんだろう。
私のせいでもし、なくなってしまったら。
そう考えるだけで涙腺がゆるむ。
泣いたところで何も変わらないのに。

最後に現場で会った人のことを思い出す。監督をはじめとしたスタッフさんの顔を思い浮かべては、みんな無事であるように祈るだけだ。
そして私にとっての最後の撮影で一緒にいた、綾野さんと星野さん。

マネージャーの言ったことを思い出す。
これを伝えるのは、信頼出来る人にだけ。

私はスマホを手に取ると、LINEを開いて文字を打ち始めた。