彼女からキスを盗む方法 Ⅲ【Reo】 (ページ5)

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105.横顔ページ5

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定位置に座ったAの脇腹をお湯の中で触る。

「ひゃあ！玲於くんやめて！くすぐったい」

「ん、まあ合格かな」

「やった〜」

言われてること分かってんのか分かってないのか
乗っかってくれてるだけなのか……
まあ嬉しそうだからなんでもいっか。

「Aってバク転できたんだね」

「できるよ。練習したもん」

「ちびなのにすごいじゃん」

「……だから……だからがんばってた」

Aの言いたいことがその一言だけでよく分かって
なんだか胸にしみる。

「……えらいよ」

「普通だよ。玲於くんだってきっとそうでしょ？お仕事にするならなおのこと」

「……そうかもね」

「ふふ、自分のことなのに」

「……上がるわ」

先に入ってたせいかなんだかのぼせそうになって
少し逃げるようにお風呂を出た。

俺が出たお風呂からは歌声が聞こえてくる。
知らない曲だったけどなんだか楽しそうだ。

後から上がってきたAが髪を乾かすのを
ソファーに座ってゲームをしながら待つ。

「はい、終わり。玲於くんもう寝る？」

「待って、今いいとこ」

「ふふ、わたしももうちょっとこの番組見たい」

キリのいいとこで終わらせて
Aの観るテレビに目をやると
智哉さんがバラエティ番組に出ていた。

「智哉さんも忙しいね」

「ね。お兄ちゃんはすごいなぁ……」

「出てる番組はちゃんと観んの？」

「ものによる。歌番組とかドラマ、映画はちゃんと観る」

「俺出てるやつは？」

「観るようになったよ。やっぱりもっと知りたいから、好きな人のこと」

テレビから目を離さずにそう言った彼女の横顔は
心なしか頬が赤くなったように見えた。

「そういえばなんでわたしがバク転できるって知ってたの？言ったっけ」

「あー、動画見た。もうやんないの？」

「チア？やらない。しばらく踊ってないし」

「そっか」

「……やってほしい？」

「そういうわけじゃないけど、A、踊んの好きだったんじゃないのかなーって」

「好きだよ。楽しかったし、いい経験だった」

画面はCMに切り替わっても
こちらを見ることなくこう続ける。

「でも、表に出る仕事はわたしには向いてない」

ちょうど脇山あずきが出ているCMが流れていた。

*