119.相見 ページ19
*
「ちょっとごめん、お兄ちゃんはここよろしく。すぐ戻る」
Aはそう言い残し、離れていった。
「まったく……勝手なんだから(笑)」
でも選手が通る通路に立ってると
誰かしら気付いて話しかけてくれる。
「え！智哉さんですよね？観られてたんですか？」
メンさんも「写真撮ってもらってもいいですか？」って
自分から選手に話しかけたり、
逆に俺らのファンでいてくださる選手もいたりして
ちょっと賑わった。
そこに、Aが田鍋選手を連れて戻ってくる。
「お、遥！久しぶり。活躍見てたよ。すごかったな」
「久しぶり。智哉くんもこの間出てたドラマ観たよ」
「遥くん、こちらメンディーさんと佐野さん」
「あ、どうも。田鍋です。初めまして」
「お疲れのところすいません。ほんとカッコよかったです」
「すごかったっすね、鳥肌立ちました」
「いや、ありがとうございます。勝った試合お見せできてよかったです」
間近で見る田鍋遥はオーラがあって
この整った顔に、あれだけ活躍してたら
人気があるのも頷ける。
「お会いできて嬉しいです。試合前もお見かけして話しかけていいか迷ったんですけど」
「ホントっすか？あの……写真とかいいですか？」
「是非！」
「じゃあわたしが」とAがカメラマンになってくれて
何枚か撮影してもらった。
「SNSとか上げても大丈夫ですか？」
「全然大丈夫です」
「まだ残って練習されるんですか？」
「そうですね、日課みたいなもんなんで」
悔しいけど、Aのお父さんが
コイツと結婚させたかったのが
会って少し分かった気がした。
でももうそこは解決済みなので怖いものはない。
「遥くんありがとね。お疲れ様」
「うん。Aも。では、ありがとうございました」
「昔からムカつくほど顔かっこいいんだよな……(笑)」
「どんまい」
「そこはお世辞でも『お兄ちゃんの方がカッコいいよ』とかないわけ？」
「お兄ちゃんはカッコいいというよりかわいい。……とも思わないけど。わたしは」
「確かに智哉さんはかわいい系じゃないっすか？」
「佐野くんまでそんな……」
「じゃ、帰りましょうか」
*
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作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2020年10月17日 7時
