彼女からキスを盗む方法 Ⅲ【Reo】 (ページ1)

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101.職業ページ1

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智哉さんは「あー……」と言葉に詰まって、
少し考えてから話してくれた。

「俺から言ったら怒られそうなんだけど……昔、心無い奴らに色々言われてたことがあって。ほら、うち両親共に有名だったから……」

「智哉さんも隠してましたもんね、ずっと」

「うん。表はみんなと仲良さそうにしてたけどねー……つらかったと思う。外ではあんまり泣いたりしないから、それこそ家で倒れたりしてたよ」

「智哉さんは、なんで今の仕事しようと思ったんですか？」

「俺は……野球向いてないと思ってね(笑)昔からお芝居は興味があって、高校生の時オーディション受けて今の事務所に入った。親の力は使いたくなくてずっと隠してたし、勇気がなくてね」

父がプロ野球選手、母がアナウンサーなら
そりゃあ周りから目をつけられることもあるだろう。
子供の頃なんて特に。

「高校生の時から両親の反対押し切って一人暮らししてたし、Aには家のこと任せっきりで悪いことしたなって思ってる。親父は家にいないこと多かったけど帰ってきた時はよく言い合いになってたし、こんな俺を見てて自分がいい子でいなきゃって思ってるんだよ」

「そうだったんすね……」

「多分Aは、もうそういう誹謗中傷や偏見持たれたりするの嫌だったんだと思う。俺らみたいな仕事してる人よりはマシでしょ」

少しそれっぽい活動してたとはいえ、
確かにメディアに出続けて人の目に触れる機会が
多ければ多いほど、いいことだけじゃなくて
悪いことも言われることが多くなる。

「……でもAは踊るの好きだったと思うよ。俺と違って親の言う通りに進路決めてったけど、唯一チアだけは自分からやりたいって言い出して、色々あっても結局プロチームのオーディション受けて3年やり遂げてるからね」

「もう踊んないんすかね」

「どうだろう……趣味でもやればいいのにね。そんな暇ないか、忙しそうだし。ファンの人が撮った昔の動画見るしかないよ(笑)……家、この近くだよね？」

「あー、そこちょっと行ったとこの脇で大丈夫っす」

マンション近くに停めて降ろしてもらう。

「すいません、送ってもらって。ありがとうございました」

「こっちこそ色々巻き込んでごめんね。ありがとうございました。またメシでも」

「はい。お疲れっす」

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