とあるモブ主人公の受難ー3 ページ20
「びー、える？なんですかそれ？」
聞いたことない単語に首を傾げるスズキだが、一方のAは顔を真っ赤にしていた。
「おおう、そんな純粋な眼差しで見てくるなってスズキ。なんか罪悪感が芽生えてくるから。まあ、分かりやすく言えば…」
先輩は本棚からある一冊の薄い冊子を取り出すと、ペラペラと本を捲り出して、
「こんな感じのジャンルだ」
ある見開きページを見せてきた。
「「!!?」」
その見開きを見た途端、Aとスズキは顔を真っ赤にしたまま硬直する。
そこに描かれていたのは、何も身に纏っていない状態の男同士が互いに絡み合う姿だった。
「ななななっ!?これってまさか…」
思わずスズキが目を覆い隠す。反対にAは茹蛸のような状態で未だ見開きを覗いていた。
「お、お、男同士の恋愛ってやつですか!?」
「そうそうBL…つまりはぼーいず・ラブゥと呼ばれてるんだ。なお、そういうジャンルを好む女性のことを腐女子と呼ばれ、男性のことを腐男子と呼ばれている」
「なんでそんなに詳しいんですか先輩…というか、なんでそんなもの持ってるんだ」
「まあ、同人世界に足を踏み入れれば嫌でも目にするジャンルでもあるからな。同人作家である以上、色んなジャンルに手を出してなんでも描けるようにしておかないと」
フッ、と全てを悟ったかのような顔をする先輩に2人は何も言えなかった。
「それで、今回はそのBLの漫画を描くというわけですか」
「そういうわけだ。だから頼む、俺の名誉と信頼を回復させるために君たちを描かせてくれないか？」
頼むと告げる先輩に、2人は互いに顔を見合わせる。それからこくんと頷き合うと、控えめに笑い、
「他を当たって下さい」
そのまま退出しようとした。
「待ってーーー!!お願いだから出て行かないでくれーーーっ!!もうお前らしか頼む相手がいないんだよ！」
先輩は必死で2人の腕を掴みながら退出するのを阻んだ。
「ちゃんと報酬は弾むからさ。な？」
そんな先輩に気圧されたかのように、Aたちが半歩下がる。
「ど、どうしますスズキくん」
「どうしますって言われても…」
先輩の目に涙が浮かぶ。
うぅ、そんな顔されたら…
「もうちょっと2人とも密着してもらえないか？」
「は、はあ…」
「先輩これ以上はちょっと…」
結局、先輩のお願いに渋々付き合うこととなった2人だった。
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作者名：フウカ | 作者ホームページ：http naru1
作成日時：2021年7月12日 20時
