【オリジナル】ありふれてない日常 (ページ36)

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澄清―２― ページ36

そして現状に至る＿＿。
にしても、まだ『人魚の涙』が出てきていない。なにかあったのだろうか。割れちゃったとか……いや、考えてはいけない。

「そこのお姉さん！」

いろいろ考えていたら、声をかけられた。振り向くと、このパーティーの主役の、雨宮空良がいた。そして、彼女は言った。

「ちょっと付き合ってくれませんか？」

しかし、良いのだろうか。彼女は、あくまでも私の標的である社長の娘なのだ。もし、バレたら、計画が総崩れだ。＿＿まあ、その時はその時だ。なんとかしよう。

「良いですよ。私は咲坂聖香です。よろしくお願いします」
「私は＿＿って、もう知ってるか」

話相手が欲しかったようだ。十分くらい話したら、彼女は満足したようで、去っていった。ようやく宝玉がお披露目となった。人々はその美しさに感嘆し、言葉を発する者はいなかった。しかし、どうやってあれを奪う？こんなに人の目があるのだ。慎重に行動しなければ。
ふと、玲さんに宝玉のレプリカを貰ったのを思い出した。よし、使おう。まずは人払いだ。だが、火事でも起こさない限り、こんな人数＿＿。
その時だった。＿＿火災報知器が鳴った。

『我々は血思蝶(けっしちょう)。このホールは火に包まれた。逃げるなら今の内だ……但し宝玉を置いて、な』

その瞬間、人々は我先にと出口へ走り出した。その混乱に乗じて、本物が入ったケースを開け、レプリカとすり替えた。そして懐に隠し、私も出口に向かった。

「さて、旅商人の家に行こうか」

歩いて四十分。大きな邸宅に到着した。インターホンを押すと、すぐに男の人が出てきた。おそらく旅商人だ。

「それは、『人魚の涙』かい！？＿＿ああ、間違いない！ありがとう、本当に、ありがとう……！」

そう言って、彼は涙を流した。
その後、疲れたろう、と言われ、少しだけお邪魔させて貰った。

「しかし驚いたよ。まさか君みたいな女の子が来るなんて……」
「でしょうね。……それにしても、どうして宝玉は盗まれたのですか？ちゃんと保管していましたか？」
「……実は、ちょっと前に脚を骨折してね。その時に見舞いに来たあいつに、まんまと奪われてしまい……。情けないね……」

＿＿どうして盗んだのかは、彼も分からないらしい。

「この宝玉は美しい。……ただ、わざわざ盗むほどの価値は無いと思うよ」

＿＿本当の価値は、美しさで決めるものじゃないからね。

「……」

その言葉の意味は、よく分からなかった。