検索窓
今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:412,105 hit

42 ページ43

『……ついて来い』




まだ泣き止まぬAを抱え、家を出て車に乗り込む。後部座席でうずくまる彼女が、ルームミラー越しにより小さく見えた。


しばらく車を走らせて辿り着いた場所。俺はAを後部座席から降ろし、そのまま抱き上げて歩き始める。



この間ひとりで訪れた、彼女の父親と母親が眠る墓石の前に再び立つ。Aはこの景色を見た途端、唇を固く噛み締めた。




『……本当は、分かってるんだろ?』




父親はもうこの世にいないことを。頭の良いAなら理解しているはずだ。

それでも探していたのは、ひとりぼっちになってしまったから。



彼女の母親はAが産まれてすぐ死んでしまい、父親は去年交通事故で亡くなっていた。

先日話した男の住職は、父親に連れられて母親の墓参りに来ていたAのことを知っていたのである。




『わたしがいなかったら』
『お母さんもお父さんも、いなくならなかった』




「わたしが消しちゃったの」と再び大きく泣きじゃくった。




『……お前のせいじゃない』
『お前の父親も母親も、誰もお前を責めちゃいない』




ずっと独りが長かったから、俺はもうこれが当たり前だと思ってしまっていたのだ。

本当は違うことに、今更になって気付いたのである。



だからその過ちを彼女も繰り返さぬよう、俺は伝えなければならない。

43→←41



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (629 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
451人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 吉田松陽   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えりんぎ※息を吸う(プロフ) - 昔の自分と比べてしまいました。あなたの作品がとても好きです。この作品に出会えたこと、心から感謝しています。涙を拭きながら、読み進めようと思います。 (2019年1月27日 16時) (レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - こんにちは、コメント読んでいただけているかどうか…でも、もしよんでくださるなら。わたしは、ハルさんの作品に心底惚れています。自分の書きたいものをえがくことって素晴らしいと思うんですよね!だから、周りの意見に惑わされず「ハルさんの作品」を待ってます (2018年5月2日 0時) (レス) id: a53110be97 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - 今更...な感じがしますけど、コメント失礼します。私、この作品読みながらずっと泣いちゃってました。素晴らしい作品だと思います。何回読んでも飽きないですね!感動しました。 (2018年4月2日 22時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
ハル@六月に一時帰還予定(プロフ) - みなさんコメントありがとうございます〜( ; ; ) お一人お一人にご返信をしたいのですが、下の方のコメントが消えてしまいそうなので割愛させていただきます( ; ; )無念……。沢山の励ましのコメントを胸にこれからも頑張って行きますので、応援お願いします!! (2018年2月1日 17時) (レス) id: 9ebc1e1d82 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 心に響きました。恋愛要素など無くとも、人を感動させられる小説は素晴らしいと思います。これからも頑張ってください。応援しています! (2018年1月12日 20時) (レス) id: acfcc66616 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory  
作成日時:2017年10月6日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。