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そんな生活が続けば、Aは自分の吐き気をコントロールできるようになっていた。
家では食べ終わった後にトイレで吐き出し、松陽の前では食べ終わった後「ごちそうさまでした」としっかり手を合わせてから吐き出していたのだ。
高杉は無口で何も喋らず、欲求も特にない詰まらないガキという印象をAに抱き、それが当たり前だと思い込む。
自分の言いつけを守って一人で食事も風呂も就寝もこなす彼女はそういうものだと自然に植えつけられていた。
しかしある日、Aはついに昼食後トイレで吐き出していたところを松陽にバレてしまう。彼女は松陽と高杉に迷惑をかけると思ったのか、身体が小刻みに震えていた。
松陽はそんなAを抱き寄せ、「大丈夫ですよ」と頭を撫でる。
彼女はその瞬間、目に熱いものが込み上げてそれを吐き出すように咽び泣く。大きな声で泣くのは久しぶりで、Aは体力が追いつかずに松陽に抱きかかえられたまま眠りについた。
松陽から連絡を受けた高杉は、幼稚園からの電話に驚いてしまう。事情を聞いた高杉は武市に車を回させ、幼稚園まで赴いたのだ。
そうして松陽に抱かれているAを見ては切れ長の目を少し丸く見開く。初めて高杉は、Aの子供らしい年相応の姿を見たのだった。
泣き腫らした目に小さな身体。松陽から受け取ったAはとても軽くて、消えてしまうのではないかと彼は杞憂する。
『……Aさんは、まだ四歳ですよ?』
松陽の言葉に、高杉は息を飲んだ。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - 昔の自分と比べてしまいました。あなたの作品がとても好きです。この作品に出会えたこと、心から感謝しています。涙を拭きながら、読み進めようと思います。 (2019年1月27日 16時) (レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - こんにちは、コメント読んでいただけているかどうか…でも、もしよんでくださるなら。わたしは、ハルさんの作品に心底惚れています。自分の書きたいものをえがくことって素晴らしいと思うんですよね!だから、周りの意見に惑わされず「ハルさんの作品」を待ってます (2018年5月2日 0時) (レス) id: a53110be97 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - 今更...な感じがしますけど、コメント失礼します。私、この作品読みながらずっと泣いちゃってました。素晴らしい作品だと思います。何回読んでも飽きないですね!感動しました。 (2018年4月2日 22時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
ハル@六月に一時帰還予定(プロフ) - みなさんコメントありがとうございます〜( ; ; ) お一人お一人にご返信をしたいのですが、下の方のコメントが消えてしまいそうなので割愛させていただきます( ; ; )無念……。沢山の励ましのコメントを胸にこれからも頑張って行きますので、応援お願いします!! (2018年2月1日 17時) (レス) id: 9ebc1e1d82 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 心に響きました。恋愛要素など無くとも、人を感動させられる小説は素晴らしいと思います。これからも頑張ってください。応援しています! (2018年1月12日 20時) (レス) id: acfcc66616 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年10月6日 18時