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『楽しいですか?』
「私の横で眠っても」と言いたげな疑問の目をぶつける。そこには「私なんか」と付け足すようで、松陽は小さく聞こえないくらいの息を吐いた。
そしてAの瞼の上に手を乗せて眠気を誘う。
『楽しいよりも、幸せです』
「暖かいでしょう?」と彼女の瞼が閉じたことを確認してから手を離す。そのまま頬を撫でるようAの顔を松陽の指先が掠めた。
彼女はコクリと頷き、しばらくすると気持ちの良さそうな寝息をたて始める。
あどけない寝顔を見た松陽は小さな笑みを浮かべ、まだAは子供ということを認識し直した。
自分と一緒に眠ることにすら利害関係を考えてしまう彼女は、いつになったら甘えることを覚えるのだろうか。
甘えてもいい相手は近くにいるのに、その存在に気づいていない。そもそも「甘える」ということを知っているのかも怪しかった。
ただワガママを言うだけが甘えることではなく、気を許すのもその内の一つだ。
その小さな肩に似つかわしくないほど背負った重荷を、早く彼に預けなさいと松陽は願っていた。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - 昔の自分と比べてしまいました。あなたの作品がとても好きです。この作品に出会えたこと、心から感謝しています。涙を拭きながら、読み進めようと思います。 (2019年1月27日 16時) (レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - こんにちは、コメント読んでいただけているかどうか…でも、もしよんでくださるなら。わたしは、ハルさんの作品に心底惚れています。自分の書きたいものをえがくことって素晴らしいと思うんですよね!だから、周りの意見に惑わされず「ハルさんの作品」を待ってます (2018年5月2日 0時) (レス) id: a53110be97 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - 今更...な感じがしますけど、コメント失礼します。私、この作品読みながらずっと泣いちゃってました。素晴らしい作品だと思います。何回読んでも飽きないですね!感動しました。 (2018年4月2日 22時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
ハル@六月に一時帰還予定(プロフ) - みなさんコメントありがとうございます〜( ; ; ) お一人お一人にご返信をしたいのですが、下の方のコメントが消えてしまいそうなので割愛させていただきます( ; ; )無念……。沢山の励ましのコメントを胸にこれからも頑張って行きますので、応援お願いします!! (2018年2月1日 17時) (レス) id: 9ebc1e1d82 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 心に響きました。恋愛要素など無くとも、人を感動させられる小説は素晴らしいと思います。これからも頑張ってください。応援しています! (2018年1月12日 20時) (レス) id: acfcc66616 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年10月6日 18時