恋の始まりと終わり【wrwrd!】 (ページ8)

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花束【em】ページ8

『(すてきなドレス。)』

結婚披露宴の帰りに、私は、貸衣装屋さんのショウウィンドウをぼんやりと眺めていた。
純白の、レースがあしらわれていて、きれいに広がった裾。

自分が着ている、青いチープなワンピースとは似ても似つかなかった。
慣れないヒールを履いて限界の足、泣いてぼろぼろのメイク、猫背の姿勢。
目の前のドレスに「貴方が着る資格はないわよ」と言われている気分だ。

片手に持っているブーケも、振り回しながら歩いてきたせいでぼろぼろ。
いい気味だ、そう思った自分が、またいやになった。

「Aさん！」
『エーミールさん』
「やっと見つけました…！お元気でしたか？私が転職してからですので…5年ぶりでしょうか」
『ええ、確か』
「大学の同窓会にも来られてなかったようですが…お忙しいのですか？」
『…そうなんです。仕事のほうが』
「そうでしたか…先生はたいへんですね。でも仕事をしているあなたの姿は、とても輝いていらっしゃる。
私も子供たちの卒業を見届けたかったのですが、残念でなりません……」
『はい…』

「今日はお会いできてうれしかったです。
次はAさんの結婚式に呼んでくださいね！」

彼に悪気はない。
いやむしろ、人生の全てにおいて、最良な選択をしてきた人だろう。
転職も、この結婚も、相手の女性も、彼にとっては運命だ。
と同時に、私の失恋もまた、運命で、必然だ。

「(明日も仕事だ。早く帰ろう)」

披露宴会場で聞こえた噂話。
相手の女性は、専業主婦になるらしい。