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戦略家【gr】 ページ35
それはまさに、ひとめぼれだった。
地元の有名な待ち合わせスポットで佇む君。
気合の入ったデート用の格好に身を包み、そわそわしている君。
何度もスマホを確認する君。
駅のカフェでフラペチーノを飲んでいた俺は、彼女にくぎ付けになったのだ。
なんて純粋なんだ。
一時間経っても、彼女は帰ろうとしない。
むしろ一層わくわくした様子できょろきょろ。
二時間経っても、彼女は帰ろうとしない。
ナンパをあしらいながら、不安そうな顔でスマホを見つめる。
三時間経っても、彼女は帰ろうとしない。
辺りは暗くなり、小雨が降ってきた。
「女心と秋の空」とはよく言ったものだが、彼女は例外なのかもしれない。
四時間経っても、彼女は帰ろうとしない。
雨はしのげても、風はしのぎ切れないようで、
風がスカートを揺らすたび、自身の体を抱きしめる。
五時間経っても、彼女は帰ろうとしなかった。
すっかりしゃがみこんでしまった彼女は、吹き込む雨に降られ、肩を濡らしている。
俺はやっと、カフェの席を立った。
彼女にスーツのジャケットをかけ、こう言った。
「お嬢さん、そんなところに居たら風邪をひきますよ。
温かいココアでも飲みませんか。」
卑怯？
策士と言ってくれ。
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作者名：ミルコ | 作成日時：2019年11月2日 14時
