恋の始まりと終わり【wrwrd!】 (ページ30)

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ケーキ、二個買って帰るのか。

お友達が来るとか…？

まさか彼女さん…とか…

『…私はこの、イチゴのショートケーキが好き…です…』

「そうでしたか！いえ、今日買って帰るわけじゃないんですが…」

ほっ。

今日もひとり分か、きっと次回買って帰るケーキを見てたんだ、と胸を撫で下ろした。

頭が考えていた以上に、心は彼に惚れ込んでいたようだ。

ケーキの一つや二つ、他人ならそう気になったりはしない。

自覚してしまうと、より恥ずかしくなって、ドキドキする。

頬が赤くなっていないだろうか、ちゃんと目は合っているのだろうか、そんな事を考えていると、

「…じゃあ、今週末に、誕生日ケーキをひとつ予約させてください。

　このイチゴのショートケーキ、5号を。」

『ぁ……』

「ん？店員さん？」

『あっ、いえ、プレートはどうされますか？』

汗をかき冷たくなった手と、うるさい心臓とは裏腹に、口は震えた声でマニュアルをなぞる。

「ゆいちゃん、お誕生日おめでとう、で。」

照れくさそうに笑う顔は、心から湧き出た恥ずかしさと、幸せの塊のような笑顔だった。
その時に初めて、彼の店員に対しての笑顔は、愛想笑いだと気付いた。

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