恋の始まりと終わり【wrwrd!】 (ページ25)

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弱い俺にできること【shp】ページ25

10分前、彼女の着信は1コールで、“間違えて発信したのだ”とそう割りきっていれば、俺はここにはいないだろう。

彼女はたびたび、俺に電話をかけてくる。
嬉しいとき、怒っているとき。

1コールで切る時は、彼氏のことで泣いているときだった。

家に到着した俺は、一度チャイムを押した後、誰も出てこないのを確認して、合鍵を使った。

俺はこの瞬間が、一番緊張して、いやだ。

俺は、息を整えながらリビングに向かう。
廊下の突き当たりのドアを開けると、彼女はお腹を抱えながらうずくまって、泣いていた。

「……またっすか？」

声をかけても、泣き続けるだけ。

いつものように、洗面所からタオルを拝借し、水でぬらす。
レンジでチン。ホットタオルの出来上がりだ。

ついでに、ホットミルクも作っておこう。

「Aさん、顔見してください。拭くから。」

彼女の頭側に回って、そう声をかけると、ゆっくりと顔を上げる。

「…！……ケガしてるなら、先言うてくださいよ…」

痛々しい口元の切り傷に、今は目をつぶる。

ホットタオルを、目元、頬、額、鼻の順で軽く拭いた後、救急箱で、消毒をした。

ホットミルクをすする彼女は、いつも通り、気持ちここにあらずといった表情で。
そんな彼女の顔を見ていられなかった俺は、また彼女から目をそらした。

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