その涙は悲？笑？喜？【tn】 ページ13
ピンポーン
「え？」
ガチャ
『来ちゃった！！！』
「お前なあ……」
『お邪魔しまーす！！』
家主への挨拶もそこそこに、冷えた空気とAが部屋に入ってきた。
「何しに来てん。」
『あれ？とんち、おこ？おこなの？ねえ、おこ？おこじゃん！』
「うるさいねん！そりゃ怒るやろ！何時や思てんねん！」
『え、もうすぐ一時。』
「終電は！？」
『終電で来たからもうないよ！』
あっけらかんと笑う顔は、高校時代と何ら変わりない。
高２でクラスが一緒になった彼女は、いつも俺の後ろをついてきた。
初対面、彼女が発した言葉は『きみ！真面目そうやな！ノート見せて！』だったか？
昔から本能のまま生きているような彼女は社会人になった今でも、
数週間に一度、俺用の酒と、自分用のジュース、つまみを持っていきなり家に入ってくるのだ。
コートも脱がず、マフラーもそのままで、買ってきた飲み物を机に並べている彼女の後ろ姿に声をかけた。
「家に来るのは百歩譲ってええけど、連絡くらいしろ。駅から歩いてきたんか？」
『そやけど…あ！もしかして、この寒い中歩いてきた私のこと心配してくれとん！？
優しいなあ！とんちは！』
「わかっとんねやったら連絡せえよ。こんな冷たい手して」
手を握ると、びっくりしたように彼女の肩が跳ねた。
『…とんち……そんなことだれにでもしたあかんよ。今まで女の子との関わりなかったからってわからんほどアホやないやろ？』
「一言余計や。俺がホンマに誰にでもすると思ってるんか？」
『そんなわけないやん。とんちは優しいし、友達思いやもんな。』
「…まあな。はよ飲もうや。」
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作者名：ミルコ | 作成日時：2019年11月2日 14時
