恋の始まりと終わり【wrwrd!】 (ページ2)

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俺、嘘つくのだけは得意やねん。【ut】ページ2

PM11：00
真っ暗な高速道路を、たばこ片手に運転していた。

「…わ、私っ、鬱くんのこと」
「ごめん。彼女つくる気ないねん。」

小一時間前に聞いた彼女の声が、今も脳内で響き渡っている。
それはさながら、幼少期に見て今も忘れられない悪夢の様で、思い出すたびに吐き気がした。

彼女のことは、好きで、愛していた。
でも、告白されたら、もう戻れないと思った。
ゲーム実況が軌道に乗りだし、そこそこの知名度と人気が出てきた。
だからこそ、彼女を巻込むわけにはいかなかった。

そう自分に言い訳をする俺は、所詮、自分がかわいいのだ。
彼女に愛想を尽かされてフラれるくらいなら、最初から恋愛なんてしなければいい。
365日、会社に行っては、ゲームの収録、編集、そんな毎日を送っていた俺には、
彼女を、大切にできる自信がなかった。

閑散としたパーキングエリアに車を止めた。

「もしもし？俺やけど。Aがさ、落ち込んでるみたいだから、慰めてやって欲しい。
…俺？おれ…は、まあええやんか。まだ家おると思うよ。
……幸せにしたってくれな。」

彼がAのことを好きと知っていながら、彼女に近づいた。
俺はつくづく最低な男だと思う。
彼女のことを昔から一途に思い続けていた彼なら、俺なんかよりもずっと大切にしてくれるだろう。

ひと仕事終えたような疲労感と、じくじく痛む胸、頬を伝う涙には「大丈夫、大丈夫」と、慰めるようにして誤魔化す。背中を包む運転席のシートがやけにあったかい。

運転を再開するには、もう少し時間がかかりそうだ。