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握られた手の温もりを、きっと私は忘れない。
その温かさをくれた人に、いつか恩返しがしたい。
私に生きる理由が出来た。
その事が、
どうしようもなく嬉しい。
「…わたし、働こうと思います」
おはよう、おはようございます、
朝の挨拶を初めて自然な笑顔で交わして、流れで言った。
温かさの残る手を見つめて、昨日の夜に思ったこと。
「いつまでも仮住まいみたいな形で、頼ってばかりじゃ駄目だと思って。
生きていけるだけのお金が貯まったら、きちんと出て行きます」
帰る場所がないなら、ここに帰ってくれば良い。
俺は大丈夫だから、気兼ねせずにここにいてくれれば良いよ。
そう言ってくれていたけれど、それに甘えていては駄目だと思った。
彼は微笑んだ。
「そっか、分かった」
俺としては別に、頼ってくれても良いけどね。
冗談っぽく言ってみせ、そして彼は続けた。
「そうだ…仕事を探すなら、ちょっと京セラドームに来てみない？」
「…えっ、あなたの職場？
無理です無理です、私運動神経良くないです」
「いや、野球選手にいるのは野球選手だけだと思ってるでしょ。
球団職員に売り子さん、清掃員、ウグイス嬢、
色んな職業の人がいて、野球場は成り立ってるんだよ。
1回行ってみよう」
あ、そうか。
この世界でキラキラ輝いている人には、
影で支える人が必ずいるんだ。
その事に初めて思い当たり、少し恥ずかしくなった。
「行きたいです…京セラドーム」
「うん、じゃあ早速行こっか」
あ、あと。
彼は私の目を見つめた。
「俺の事、いつまでもあなた呼び？」
「…えっ、でもそんな失礼な」
「全然失礼じゃないから笑
むしろ名前で呼んでほしい、なんかよそよそしいし」
「えぇっ…じゃあ…山本さん」
ちょっとだけ不満そうな顔をしたけれど、すぐに「まぁいっか」と笑って立ち上がる。
「うん。なんかいいね、名前呼び。
じゃあ行きますか、Aちゃん」
「…はい、山本さん」
(名前を呼ばれることが、くすぐったい)
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月10日 21時) (
レス) id: b946a130ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るる | 作成日時：2019年6月10日 21時
