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「先行って玄関のドア開けて？俺、両手ふさがってるし」
「鍵は？」
「あー…バックじゃね」
「勝手に漁るの気がひけるけど、仕方ないよね」
エレベーターで目的の階へつくと、
まず私が先に出る。
後ろからAちゃんをおぶった永瀬くんがついてきているのを確認しながら鍵を探す。
「これかな？他に鍵見当たらないし。それで部屋はどこ？」
「1番端の部屋、…うわっ」
「どしたの？」
「……なんかこいつ…むにゃむにゃ言ってんだけど…よく聞こえねえわ。心愛わかる？」
「ちょっとまってね」
一旦立ち止まって、Aちゃんの口元に近づく。
ああ言ってる、なんかむにゃむにゃ……あ、…
…………。
「ん？わかったか？」
「……うん…きこえたけど…寝言かな…」
「なんて？」
「言っていいのかな…いいよね…」
「なんだよ、はやく言えって」
「……永瀬くんの名前よんでる」
「………は」
「それだけっ」
「………」
ぱちぱちと数回瞬きしている永瀬くんに背を向けて、再び歩き出す。
…ああもう。なにこれ。
みてるこっちが恥ずかしくなる。
今頃永瀬くんの耳は真っ赤なんだろうか。
何度かみたことがある気がするけど、なんのことだったか。
多分Aちゃん関係だろうなあと記憶を巡らせていると、
「ん？」
「……なんや」
さっきので動揺してるのか、関西弁に戻ってるよ永瀬くん。
そう指摘する間もなく、とりあえず目の前の光景を伝えるのが先だろう。
「Aちゃんの家、1番端だよね？」
「おん」
「誰か、いる」
「どこに」
「Aちゃん家の前に。…男の人？」
近づいていくと、徐々にその人の顔がはっきり見えてくる。
向こうも足音に気づいたようで、こちらに顔をむけた。
玄関先の壁を背中にしゃがみ込んでいるその人は、
茶色くて長い前髪の隙間から私を不思議そうに見ると、その背後の永瀬くんに視線をもっていって眉をしかめた。
「あれー？きみ、たしか」
「平野さん、ですよね。永瀬です、この前は、どうも」
「……ふーん………そゆこと…」
「あの平野さん、どうしてここに」
「ん？それは俺のセリフじゃないかなあ？」
どうやら2人は知り合いのようで、
平野さん、と永瀬くんが呼ぶ人が立ち上がる。
ちょうど風が吹いて、その人の前髪があがった。
「どのツラ下げて、Aと会ってるの？」
そう言って、すごく整った顔で、
にっこりと笑う。
その姿に何故か、一瞬、見惚れた。
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れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
