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「……っ、」
永瀬くんが息をのんだ。
…空気が、ちがう。
平野さんという人を取り巻く、独特の空気。
「ね、どーゆーつもり？」
「なんのこと、か…」
「やーだなあ、とぼけないでよ。俺がなにも知らないとでも思った？」
「Aと、どういう関係なんすか。どこまで知って」
「……A送ってくれたんだよね、ありがと。ここからは俺が運ぶ」
永瀬くんが戸惑いながら、背中のAちゃんをチラリと確認した。
いまの平野さんの言葉には有無を言わさない何かがあって、
その迫力に押されるように、ゆっくりとAちゃんを背中から下ろす。
それに合わせるように背後に回り込んだ平野さんは、そのままAちゃんを横抱きにした。
永瀬くんが、複雑そうな表情でそれをみる。
と、にこにことしたままの平野さんが私の手を指差して
目があって、緊張が走る。ノドが、乾く。
なんなの、この人____
「かぎ。」
「……へ？」
「その手に持ってる鍵、Aの部屋の」
「………あ、…ああ！」
慌てて渡そうとすると、
「失敗した！手あいてないやん俺！うけとれない！げんかん開けて〜」とねだられ。
は、はい…と鍵を差し込み、ドアを開ける。
「じゃあ、お2人さんお世話になりました〜」
「あの！さっきの質問の答え…」
「……ここ数日、Aの様子変やってん」
彼の顔から、笑顔が消えた。
抱えているAちゃんに視線を落とす。
その瞳が、愛おしそうに揺れた。
……ああ、と思う。
見抜けてしまう、女の勘。
噂のAちゃんの上司は、この人なんだろう。
「君に捨てられてからの数年間、Aが何ともなかったわけないでしょ」
「……」
「傷ついて、怯えて、さ…孤独なくせに強がって」
「……」
「病気のこと、きいた？」
「……ぇっ…？」
「あ〜やっぱり。なーんにも知らない」
「病気って」
「過呼吸起こすようになってたんだよ」
「……過呼吸」
「精神的に大きな負担があるからだって。…ここまで言えばわかった？」
「……」
「おーい、わかってる？」
「……お、れ？」
私も、知らなかった。
病気。過呼吸。
……そんなの、Aちゃん、一言も…
だけど、この人は知っていた。
それが意味することは。
「せっかく、治ってきたとこ」
「……」
「もう、Aを苦しめるの、やめたげて？」
ボソリと静かに呟いて、
平野さんは家の中へと入っていった。
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れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
