☆150 ページ16
ひとまず私を近くのソファへ座らせると、
ショウさんはちょっと待ってて、と言い、どこかへ走って行ってしまう。
1人になって、心細くなる。
あれ、おかしいな。
私、少しは強くなったと思ってたのに。
全然ダメだ。
先程何があったか思い出そうとするだけで、ガタガタ震える。
…やめよう、思い出すのは。
とにかくショウさんを待とう。
暫くして、ショウさんが戻ってくる。
途端に安堵の気持ちが広がって、そのスーツの袖を思わずギュッとした。
ショウさんがそれをみて、少し目を丸くする。
「……こわかった、です…」
「…ごめ……、あの…長妻くんにさ連絡入れてたのと、部屋取りに行っててん。思ってたよりフロント混んでてさあ」
「部、屋？」
「今日はもう、俺も疲れちゃった。ここのホテル泊まろ？」
「ここ…普通の部屋でも、凄い高いんじゃ…」
「俺の受賞祝いだと思えばいーじゃん」
「ていうかカードキー1枚しか持ってませんけど…？」
「あ〜なんかあ、部屋が1個しか空いてなくて」
「一緒の部屋泊まるんですか…？！」
「何か問題が？」
「……え、いやそのですね…」
渋る私を、ほら、行くよって半ば強引に立たせて、
乗ったこともないような豪華なエレベーターで着いたのはこれまた広い部屋。
ショウさん、いったい幾らの部屋取ったの…
そういえば、彼がボンボンだったということを思い出して苦笑いした。
そこで思考をストップさせた。
もうなにも、考えたくない。
気を抜いたからか、体の糸が切れて、
近くのベッドになだれ込む。
ひととおり部屋中を見終わったのであろうショウさんが、壁の角からひょっこり顔を見せた。
「どうしよっかなあ、お腹すいてる？」
「……空いてないです」
「風呂入る？」
「……今は、いいです」
「じゃあ俺入ってい？」
「…………やです」
「……、」
「ひとりに、しないで」
ショウさんの足元を、ぼうっと見ていた。
…あー……ドレス、こんなことしたら皺になっちゃう…
けど、もう動けない。動きたくない。
そんなことを考えてるうちに、ショウさんが近づいてきて、
私が横たわっているベッドの真横に立つと
その手が伸びてきて、ふわりと頭を撫でた。
それが心地よくて、目を閉じると、
今度は撫でながら、すーっと髪を梳き始めた。
「…ショウさん」
「……なあに」
「…ひとりにしないで……」
「せえへんよー？」
その声が、あまりに優しくて。
堰を切ったように、嗚咽が溢れ出す。
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れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
