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せっかく展覧会に来たっていうのに、
永瀬くん、Aちゃんばっかり見てる…
もったいない。
なにやってるの!
「ねえねえ、この色の合わせ方、かわってない?」
「あ、確かに。俺だったら怖くて出来ないかなあ。こんなとこに強い色いれるなんて、一歩間違えればじさつこうい?」
「だよね〜!でもちゃんとバランスとれてるから凄いね!」
次から次へと絵についての話をたたみかける。
絶え間なく続けてたら、ようやく、永瀬くんも集中してきたみたい。
さみしそうな顔して、Aちゃんが後ろから離れていくのを確認した。
は〜、長かった。
ったく、絵に興味が無いなら最初から来るんじゃないわよ。
ふん!と満足したけれど…
同時に、罪悪感。
私いま、すっごく意地悪してる…性格悪い……やな女の子だ。
「……永瀬くん?」
「んー?」
「そろそろあっち行こうよ」
「俺まだこれ見てるー、先行ってていーよ」
「………」
絵から視線を逸らさず、
それだけ言うと会話は途切れた。
…まるで相手にされてない。
それだけ真剣に絵を見てるってことだけど。
いいんだ。それは。そうなることを望んでたから。
問題は、さみしいって思っちゃってる私のこと。
Aちゃんに同じ思いさせといて?それで追い出して。のくせに、自分のことになると話は別みたいになる。
最低だ、わたし。
落ち込みながら、永瀬くんの後ろ姿をみてたら、
「廉!」
どこからか、Aちゃんが帰って来て、
永瀬くんに駆け寄る。
永瀬くんは、ハッとしたようにAちゃんの方を向いて、なんだよもーって笑う。
……さっき、私が話しかけても
私の方に向くどころか、視線さえくれなかったのに。
なのに、Aちゃんだったら
体も視線も、笑顔まで付けちゃうんだ。ふうん。
「油絵ってなに?難しいの?」
「は?いきなりどしたん?」
「ちょっと。不思議に思ってん」
くすくすくす。笑い合ってる。
2人だけの会話。
お互いの声に耳を傾けて。ぽんぽんと心地よさそうに言葉のキャッチボールが続く。
躊躇なく、関西弁になってるよ永瀬くん。
……私にはあんなに抵抗してみせたがらないのに。
そんなの無かったみたいにイキイキ関西弁しゃべってる。本来の姿。もしかしてすっごくお喋りさんだったり?
なんか、劣等感。
そして気づく。1番場違いなのは私なのかも、とか。
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◯◯(プロフ) - 最初に読んだのは一足遅い2018くらいなのですが大好きすぎて今から五周目入ります!!!年1ペースで読んでます大好き!! (2022年12月22日 13時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
momoka0709(プロフ) - このお話、本当に好きです。何回も読んでしまいます (2017年9月18日 0時) (レス) id: 4e5c643142 (このIDを非表示/違反報告)
平野ゆい - 私にもキュンキュンするような恋、したい!! (2017年2月24日 22時) (レス) id: a265317775 (このIDを非表示/違反報告)
かのん - 悪役になりきれない、根っこは性格の良い心愛ちゃんが地味に可愛いです(T-T)噛ませ犬感がもう…… (2015年8月11日 1時) (レス) id: 07aca28da1 (このIDを非表示/違反報告)
もず(プロフ) - ほんとこの小説すきです!読むたんびに☆の一番右連打したくなります笑 こんな恋がしたかったです(;_;)笑 更新楽しみにしてます^^ (2015年6月7日 23時) (レス) id: 1d4cc7955f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆい☆ | 作成日時:2015年3月31日 21時