☆24 ページ24
「……ていうのは嘘で〜、」
「は?!う、そ?!!」
「締め切り直前まで、俺が!この俺が!完成してへんと思うか?んなわけあるかーい、とっくに余裕もって完成してるわ」
「はーー!!!なんや、心配して損したやんか」
「せやけど部活サボってきたのはほんま。」
吸い寄せられるみたいに、
視線が合う。
私をみる、茶色い瞳。
「限界やったから、さ」
まるで、それは
魔法のように。
ちょっと掠れた、低い声に
ドクドク鼓動が速くなる。
ミーンミーンて、
蝉が鳴いてる。
やけに響いて聞こえるのは、どうしてだろう。
「…………会いにきた」
手が。
重なって。
私より、ひと回りもふた回りも大きな手。
すらりと長い指先で、
くるり、と円をえがく。
「俺、彦星みたいに一年は、待てへんねん」
スーッと細められた目。
ああ、これは誰?
知ってる。廉。永瀬廉。
私の幼なじみ。
なのに、見たことない。
そんなカオ。
引っ越す前、廉の部屋に入ったら怒って押し倒されたときみたいな。
………オトコの、カオ。だ。
「織姫、さみしそうやったし」
私をみる視線が、少しだけ意地悪に歪む。
くらりとした。
………廉の言ってる織姫って……
うそだ。
じゃあ廉が彦星?
なにそれ……
「もうそろ、帰ろうか」
いつもなら、ここで手は離れるのに。
今日は、そのまま繋いだまま
廉は立ち上がって歩き出す。
「………廉……、」
「東京やと星、みえへんから。ゆっくりみして?」
「………」
手を、繋いで歩く。
たしか幼稚園のころは、そうやってた。
当たり前に。
でもいつからかそれはしなくなって。
たまに触れるだけで、
ドキドキした。
何も言わず、
繋いだ手だけに、意識が集中する。
今年の7月7日、
織姫と彦星は会えたのだろうか。
3271人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
◯◯(プロフ) - 最初に読んだのは一足遅い2018くらいなのですが大好きすぎて今から五周目入ります!!!年1ペースで読んでます大好き!! (2022年12月22日 13時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
momoka0709(プロフ) - このお話、本当に好きです。何回も読んでしまいます (2017年9月18日 0時) (レス) id: 4e5c643142 (このIDを非表示/違反報告)
平野ゆい - 私にもキュンキュンするような恋、したい!! (2017年2月24日 22時) (レス) id: a265317775 (このIDを非表示/違反報告)
かのん - 悪役になりきれない、根っこは性格の良い心愛ちゃんが地味に可愛いです(T-T)噛ませ犬感がもう…… (2015年8月11日 1時) (レス) id: 07aca28da1 (このIDを非表示/違反報告)
もず(プロフ) - ほんとこの小説すきです!読むたんびに☆の一番右連打したくなります笑 こんな恋がしたかったです(;_;)笑 更新楽しみにしてます^^ (2015年6月7日 23時) (レス) id: 1d4cc7955f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆい☆ | 作成日時:2015年3月31日 21時