6:*Rigel* ページ7
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「兄ちゃん、なんか良いことあったの?」
「あァ?」
「何かそわそわしてる」
晩飯中、向かいに座った玄弥が俺に言った。
…んな顔に出てるか? そりゃ良い事って片手に収まりきるような軽いもんじゃねェ程嬉しいけどよ。
「内緒だァ。お前も何か良い事でもあったんかァ?」
「何で?」
「ピーマン残さず食べてるからよォ」
「むぐっ…俺はもうピーマン食べれるよ!」
「そうかァ、偉いなァ玄弥」
「いつまでも子供扱いすんなよ!」
そう言うがまだお前は中2だろうが。
背もまだ小せえし子供と変わんねェだろ。
と言いてェがまた玄弥は怒るだろうからやめとく。
先に食い終わって片した後部屋に戻って携帯を開いた。
「星奈……A…」
無意識に名前を呼んだ声が出ていた。
あんま投稿してねェが、タグ付けされた投稿も合わせて全部見ちまった。
何だこれ、ストーカーかよ。
最初の投稿に写ってる男。
間違いなく、今日目が合った女子と一緒にいた黒髪野郎だ。
「……ッチ、ンだこれ…」
苛々する。糖分摂取したのに。
好きな女の隣に男が一人写ってるだけで視界が狭くなって心臓で暗い灯が燃える。
もっと早くに気づけてたら、この投稿の彼女の隣は俺が、
ヴー
「…!」
バナーにインスタのメッセージ通知が来た。
今まさに俺がずっと待っていた人からのメッセージ。
まだ既読はつけずに通知を長押しして内容を見る。
「兎……」
"初めまして。星奈Aです"
その後につけられた兎のスタンプ。
返信が早すぎると駄目かと思いつつも返さずにいられねぇ。
頭をがしがしとかいて携帯片手に長いため息をつく。
「……ハァ………。くそ……たまんねぇ…」
好きな女と連絡し合うってこうも嬉しいもんか。
にやけんのが抑えきれなくて口元を手で覆った。
無難に、"経済学部1年不死川実弥です"と打った。
…あーくそ、素っ気なさすぎんだろ。
"今日は突然話しかけて、嫌でしたよね"
…そんな事ねェ。むしろ嬉しかったわァ。
なんて返そうか迷ってると、あっちからまた通知が来た。
"でも"だけ。
…でも?
"ずっと気になってたから、お話できて嬉しいです"
「………………勘弁しろォ…………」
やべぇ。阿保みてェに攻撃を食らった。
ダメージが半端ねぇ。
我慢出来なくなってベッドに倒れこんで、甘い熱に浮かされ俺の手は返信を放棄した。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時