2:Canopus ページ3
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「……ぃ、オイ、A?」
「…っは! ……え、よ、呼んだ?」
「3度も呼ばされた」
吸い込まれる様に長い一瞬を、彼と目を合わせていた。
未だにあの人からの視線が消えない。
逃げる様に私は小芭内の手を引いて校内へ向かった。
「ねぇ今の人って……名前、何ていうの?」
「まさかお前も他の者と同様一目惚れしたんじゃないだろうな」
「ち、違うよ! あれだけ人気だから名前知りたいなって…」
疑りの目を向ける小芭内が怖い。
何とかごまかして笑うと、まだじろりと私を睨む彼がくぐもった声を出した。
「……体のでかい方から宇髄天元、不死川実弥だ。
ただ図体がでかければ良いというわけではないがな」
「不死川……実弥………」
……怖かったな。
額を裂く程大きな傷と、緩い首元から見えた鍛え抜かれたであろう体。
どうしてさっき目が合ったんだろう。
そしてなぜ……不死川君も、私も…目を逸さなかったんだろう。
「お前本当に一目惚れじゃないだろうな? 様子がおかしいぞ」
「ち、がうってば! 何か睨まれた気がして…」
「睨まれる? 自意識過剰だろう。お前の様なチビが不死川の目に止まるわけがない」
「…………確かにそうだけど、もっと言い方あるんじゃない?」
相変わらず本当口が悪いんだから。
でもこう見えて優しいし世話焼きなんだよね。
ふふ、と笑みが溢れると隣から「笑うな気色悪い」と罵倒された。
「急ぐぞ。お前のおかげで5分前だ」
「はあい」
早歩きして階段を上り講義室に着く。
名簿の"星奈A"と"伊黒小芭内"に丸をつけ、適当に空いてる席を探したけど前の方しか空いていなかった。
「ふぁ……眠い…」
「隈が濃い。一体何時に寝たんだ?」
「3時……夜更かししちゃった」
「管理能力のない奴だ。お前はもっと学生という自覚を持て。入学してまだ半年と経っていないのになんだその体たらくは……オイ、人の話は聞け」
「いひゃい、聞いてるよ!」
頭をこっくりしながら小芭内の長い話を聞いてると頬に鈍い痛みを感じて隣を睨む。
小芭内が私の頬をうざったく摘んでいた。
「とにかく、お前が不死川に睨まれただの勘違いしてるのも寝不足のせいだ。バイトが終われば帰ってさっさと寝るんだな」
「今日ラストだからまた遅くなる」
「お前は俺を苛つかせるのが趣味なのか?」
そんなこんなで教授の話をまるで聞かずに90分が過ぎ、1限が終了した。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時