19:Fornax ページ20
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……手が。ずっとくっついたまま離れない。
こんなの彼女でもないのに駄目だよね…!
困惑していると、実弥君は気付いたようでぱっと手が離れた。
寂しい風が少し冷たい。
「ッわり、無意識」
「あ、全然…平気」
「ごめんなァ。伊黒との先約あったみてェだしよ」
「いいの、大丈夫!」
まただ。実弥君は私に、時々こうして謝る。
実弥君は何も悪いことしてないのに、私は偉い人でもなんでもないのに、彼は私の機嫌を逐一伺うんだ。
「…謝らなくて、いいよ?」
「……?」
「実弥君いつも私に謝ってる。何も悪い事してないよ」
「……迷惑かけてんだろォ」
「そんなことない! 実弥君の事迷惑って思ったこと、一度もない!」
むしろ私は、どこか、
はっと口をつぐんだ。今何を言いかけてた?
沈黙の空気が秋に揺れた5秒後、実弥君は「なら」と息を吐いた。
「今から俺が何言っても…お前は迷惑って、思わねェ?」
「うん。勿論。……何?」
「……週末、二人で出かけてェんだけど」
予想外の一言に、一瞬表情が笑顔のまま固まった。
不安そうな顔した実弥君が私を覗き込んで「…星奈?」と名前を呼んでから必死に返事を探す。
「……あ、あの…相手を…間違えてない…?
宇髄君じゃ、なくて…?」
「ンでここで宇髄が出てくんだよォ」
「じゃ、じゃあ…他の女の子……とか、」
「違ェって。分かんねェ? …お前とデートしてェっつうんだよ」
「……っえええ……!!!」
ポケットに手を突っ込みながら首をこてんと傾げる実弥君。
彼に言い放たれた言葉が衝撃すぎて、口元を押さえても声が漏れる。
「っわ、私が…そんな大役…!」
「っふは、大役って何だよ。…けどまァ、星奈にしか担えねェな」
「……っ是非! 行きましょう…!」
「…………うし」
実弥君は小さく笑って、私の頭にぽんと手を乗せた。
実弥君に触れられると、ドキドキするのと一緒に、安心する気持ちが生まれる。
優しくてあったかい気持ちになる。
「…あ、今更だけど…LINEやってる?」
「……!」
「良い機会だし良かったら交換しない?」
「…おォ。する」
何だか少し嬉しそうな実弥君から連絡先を貰って、東京駅まで一緒に帰った。
…ていうか待って、デートだよね。デート、だよね?
「…………どうしよう、何着ていこう…!!」
散々家に帰って悩んだ挙句、私は携帯を開いて小芭内に電話した。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時