12:Serpens ページ13
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扉の裏に不死川君はしゃがみ込んで私を見上げていた。
…まさか、待ってたの? 私を…?
よっこらせ、と立ち上がる不死川君は側に置いていた鞄を持って私の隣に並ぶ。
「…もしかして、待ってた?」
「あァ。二人で話してェと思って」
「…っごめん! いつから…」
「あー、ンな長ェ事待ってねェから気にすんな」
不死川君の鼻は少しだけ赤くなっていた。
いくら10月の終わりといえどもこんな薄着じゃ絶対寒かっただろう。
それに私は21時に上がりって伝えた筈なのに、1時間前から居るって事は…。
「…ちょっと待ってて…!」
「ア?」
裏口からもう一度中に入って、閉め作業に入っているキッチンへ戻る。
店長から許可を貰い、ドリンクサーバーからホットのミルクラテを急いで作ると大急ぎで裏口へ向かった。
怪訝な顔した不死川君の前に白いパックのドリンクをずい、と出す。
「これ、ホット! 待っててくれたお詫びで!」
「俺が勝手に待ってただけだから気にすんなァ。
……それに俺、コーヒーは…」
「大丈夫、コーヒーじゃないよ! 不死川君甘いの好きだよね? ミルクラテにしたの」
「…!」
不死川君の目が輝いたのを見逃さない。
渋る彼の手を掴んで、半ば強引にカップを持たせる。
おずおずとそれに口をつけた不死川君は「…甘ェ」と呟いて綻んだ。
「…星奈も飲むかァ?」
「え、いいの! ……っ、あ、やっぱり、大丈夫」
「遠慮すんな。お前が持ってきてくれたモンだし」
「…い、いっつも飲んでるから…平気!」
ゆっくり駅に向かいながら歩いてると、背の高い彼が少し屈んで私にカップを見せてきた。
ミルクラテ私の大好きなドリンクだから本当は手が出る程欲しいんだけど…。
不死川君と間接キスはレベルが高すぎる…!
「不死川君は…彼女居ないの?」
「ア? 何で」
「居たら…私不死川君の隣に並んだ罪で死刑だから」
「…ぶは、何だそれ。ンな罪刑ねェよ」
「あるってば! …女の子の中では」
不死川君は分かってない。
モテる男の子は、分かってないんだ。
女の子達の中で…抜け駆けとか、出しゃばったりしたら、どれだけ罪が重いか。
「…良かったなァ。死刑じゃ無くて」
「え? 何で?」
「彼女居ねェよ」
「……そっ、か……。そっかあ…」
不死川君にとって丁度いい高さに私の頭はあるのか、ぽんと手を置かれた。
そして何故かそれに心底…ほっとしたんだ。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時