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其ノ伍拾参 ページ10

Noside

敦と与謝野は、何も知らずに会話をしていた。

「元来マフィアってのは奇襲夜討が本分だ。
夜道にゃ気ィつけるんだね。
何時どこで襲ってくるか知れないよ。」

与謝野がそう敦に警告したその時……

車内にアナウンスを知らせるコールサインが流れる。

[あァ〜、こちら車掌室ゥ。誠に勝手ながらぁ?
唯今よりささやかな『物理学実験』を行いまぁす!]

驚く者が大半の中、口角を上げる者が一人。

「はじまった……」

無論、Aである。

その隣では、涙香が無表情のまま、黙ってアナウンスを聞いていた。

[題目は
『非慣性系における爆轟反応、および官能評価』
被験者はお乗りあわせの皆様!
ご協力、まァ〜っことに感謝!
では早速ですがぁ、これをお聞きくださぁ〜い!]

その言葉を合図に、爆裂音が先頭車両の方から聞こえて来る。

[今ので二、三人は死んじゃったかなぁ〜?
でも、次はこんなモンじゃありません!
皆様が月まで飛べる量の爆弾が、
先頭と最後尾の車輛に仕掛けられておりまぁ〜す!
さてさて被験者代表敦くん!
君が首を差し出さないと、乗客全員、
月どころか天国に行っちゃうぞぉ〜!]

「な……!」

「云った傍から御出ましってワケだ……!」

「ど、そうしましょう!?」

「一、大人しく捕まる。
二、疾駆する列車から乗客数十人と一緒に飛び降りて脱出。
……三」

「連中を……ぶっ飛ばす?」

与謝野はにやりと口角を上げた。

「何しろ妾らは武装探偵社だからねえ。
さて敦、手分けして爆弾を解除するよ。
妾は前、アンタは後部だ。」

「もし敵がいたら?」

「ぶっ殺せ!」



敦と分かれた与謝野は、先頭車両に急ぐ。

「(一般人も乗ってる白昼の列車に自爆紛いの脅迫。
ポートマフィアの謀にしても豪い覚悟……
否、執着だね。一体、どんな奴が──)」

ひとつ前の車輛に乗り移ったその時、与謝野の足下に檸檬が一個、転がってくる。

「!?」

次の瞬間──その檸檬が爆発する。

爆煙で曇る車内の床に、与謝野が倒れている。

「果断なる探偵社のご婦人よ、ようこそ!
そして、さようならぁ〜!」

倒れていた与謝野が、懸命に立ち上がる。

「おやおや……誰かと思えば有名人じゃないか。」

「ほう。驚きだなぁ。最近の女性は頑丈(タフ)だ。」

「男女同権の世だからねェ。
妾からすりゃ、アンタみたいな指名手配犯がこんな所にいる方が驚きだよ……梶井基次郎!」

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舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時

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