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其ノ陸拾肆 ページ21

Noside

「私はこういう取引では嘘をつかない。
知ってると思うけど。」

投げ返されるナイフを手元も見ず受け取った中也は、疑心暗鬼の眼差しで太宰を睨む。

「手前っ……望みは何だよ?」

「さっき云ったよ。」

「人虎がどうとかの話なら、芥川が仕切ってた。
奴は二階の通信保管所に記録を残してる筈だ。」

「あ、そう。まあ予想はついてたけどね。」

「てッ……」

中也は階段を上がって、部屋を出て行こうとする。

「チッ……用を済ませて消えろ。」

「どうも。でもひとつ訂正。
今の私は美女との心中が夢なので、君に蹴り殺されても毛ほども嬉しくない。悪いね。」

「あ、そう……
じゃ今度、自 殺志望の美人探しといてやるよ。」

「中也……君、実は良い人だったのかい?」

「早く死ねって意味だよ、バカヤロウ!
云っておくがな太宰。
これで終わると思うなよ。二度目はねえぞ。」

「違う違う、何か忘れてない?」

中也は、煌めく太宰の視線を背中で受ける。

しばらくした後、意を決したように振り返った中也は、内股になる。

「二度目はなくってよ!」

「…………」

「……なくって……よっ……て……
笑うとこだろお!!」

「ふふっ……ははっ……」

中也の叫びに応じるように、微かな笑い声が聞こえる。

但し、太宰の声では無い。

「この声……」

「あはっ、あはは……やばっ、我慢出来なっ……」

「もう出て来てもいいんじゃない?……A。」

太宰に呼ばれたAは、地下室にできた影から現れる。

その手には、赤く光る……

「おい、A。その手に持ってんのって……」

「録画はバッチリかい?」

「勿論ですよ、太宰サン。」

「お前ら、何時の間に結託して……」

「後で送ってくれるよね?」

「厭ですよ。
貴方の今の連絡先を登録するのが癪なので。」

「俺の話を聞け!」

「「ん?」」

揃った声に、Aが顔を顰める。

それとは対照的に、太宰は嬉しそうに口角を上げた。

「矢張り、私とAの相性は良いみたいだねえ。」

「絵空事を……あまり調子に乗らないで下さい。」

「んで?何でAは此処にいんだよ?」

「中也の勇姿を後世に残そうと……」

「やめろ!今すぐその動画消せ!」

「あー、うん。別に良いよ。」

「……良いのか?」

「はい、これでいい?」

Aは、手にしているビデオカメラの録画を削除した。

「何で……」

「別に……バックアップあるし。」

「おいィィィ!」

其ノ陸拾伍→←其ノ陸拾参



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舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時

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