其ノ漆拾弐 ページ29
Noside
Aが涙香と電話していたのは、影の中。
中也を揶揄うために、待機していたのだ。
涙香との電話を一方的に切ったのは、中也が来たからである。
その後、中也を散々揶揄い、直ぐに密輸船に向かったが……
「間に合わなかったかぁ。」
既に遠く離れた密輸船を見て、Aは肩を落とした。
その後、瞬きする間に彼女の姿は影に消えた。
「……遅かったか。」
密輸船まで異能力を使ってなんとか移動したAが見たのは、断絶を破り、芥川を殴る敦の姿だった。
「こんなんなら、中也揶揄うのやめとけばよかった。」
敦と鏡花が、国木田によって救出されたのを見送って、Aは沈み行く密輸船の上で涙香に電話をかけた。
「もしもし、涙くん?頼んでたあれ、お願い出来る?」
[樋口の処へ行って、鍵を渡せば良いんだろう。]
「うん、そう。宜しくね。」
[嗚呼。]
電話を切ったAは、海へと飛び込んだ。
「待っててね、相棒。」
────芥川を助ける為に。
電話を二秒程見詰めた後、
「Aからの任務は、必ず果たす。」
樋口の執務室に向かって、涙香は歩き出した。
「樋口。」
「涙香さん!如何かしたんですか?」
「Aからこれを渡すように云われたんだ。」
「何ですか、これ?」
「モーターボートの鍵だそうだ。」
「モーターボート?何故その鍵を?」
「芥川を探しに来い……と云っていた。」
「あ、芥川先輩を!?如何いうことですか?」
「落ち着け。Aから地図を貰ってる。
このポイントに行けば、芥川が居るらしい。」
「芥川先輩は今、人虎を密輸船で輸送中の筈……
その密輸船が人虎によって沈められたと?」
「さあな。」
「Aさんは、今何を?」
「……判らない。俺は、何も聞かされて無いんだ。」
少し悲しげな涙香の表情を見て、樋口は強く鍵を握り締めた。
「取り敢えず、私は芥川先輩を探して来ます。」
「嗚呼、頼む。」
出て行く樋口の後ろ姿を、涙香はただ見詰めていた。
沈んでいく芥川を見付けたAは、その腕を掴み引き寄せる。
そして、芥川の身体を抱きかかえ、海面を目指す。
「っ、はぁ、はぁ……」
首筋に纏わり付く髪を、鬱陶しそうに払い除ける。
「龍くんっ!」
「…………」
「龍く……気絶してるのか。」
死んでいなかった安心と、救えなかった腑甲斐無さを感じ、小さく溜息を付いた。
それと同時に、顔を見られなかったことに安心を感じた自分を、酷く恨んだ。
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舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時