検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:39,409 hit

其ノ陸拾壱 ページ18

Noside

いまだ壁の鎖に両手を拘束された太宰が、暢気に欠伸などしながら捕まっている。

「(予想通りなら今頃彼方も……)」

自分の手首の手枷を見る。

「……頃合いかな?」

「相変わらず悪巧みかァ、太宰!」

「……その声は。」

階段を降りてくる男が、太宰を見て楽しそうに笑みを浮かべる。

「こりゃ、最高の眺めだ。百億の名画にも優るぜ。」

その男の正体は──

《ポートマフィア》幹部
中原中也
能力名『汚れつちまつた悲しみに』

「最悪。うわっ最悪。」

「良い反応してくれるじゃないか……
嬉しくて縊り殺したくなる。」

「わあ、黒くてちっちゃい人がなんか喋ってる。
前から疑問だったのだけど、その恥ずかしい帽子、どこで購うの?」

「云ってろよ放浪者(バガボンド)
良い年こいてまだ自 殺がどうとか云ってんだろどうせ。」

「うん。」

「否定する気配ぐらい見せろよ……
だが今や手前は悲しき虜囚。泣けるなァ太宰。
否、それを通り越して──少し怪しいぜ。」

中也は太宰の頭髪を掴む。

「丁稚の芥川は騙せても、俺は騙せねえ。
何しろ俺は手前の元相棒、だからな。
……何をする積りだ?」

「何って……見たままだよ。捕まって処刑待ち。」

あの(・・)太宰が不運と過怠で捕まる筈がねえ。
そんな愚図なら、俺がとっくに殺してる。」

「考え過ぎだよ。心配性は禿げるよ。はっ、まさかでも」

「ハゲ隠しじゃねえぞ。一応云っとくが。
俺が態々ここに来たのは、手前と漫談する為じゃねえ。」

「じゃ何しに来たの?」

「厭嫌がらせだよ。」

「……!」

「あの頃の手前の『嫌がらせ』は芸術的だった。
敵味方問わずさんざ弄ばれたモンだ。だが──」

中也が凄まじい回し蹴りで、太宰の頭上を払う。

太宰の背後の壁の一部が破壊され、太宰の手枷に繋がれていた鎖が途中で切れる。

「そう云うのは大抵、後で十倍で返される。
手前が何を企んでるか知らねえが……
これで計画は崩れたぜ。俺と戦え、太宰。
手前の腹の計画ごと、叩き潰してやる。」

「……中也。」

「あ?」

パチンと指を鳴らす太宰。

その瞬間、太宰の両手の手枷は左右共に解けて落ちる。

「君が私の計画を阻止?……冗談だろ?」

「何時でも逃げられたって訳か。
良い展開になって来たじゃねえか!」



速度は東南東に20(ノット)───。
公海に向け進んで居る──。

海の上を、探偵社の小型高速艇が進んでいく。

「死ぬなよ、小僧……」

其ノ陸拾弐→←其ノ陸拾



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
169人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。