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其ノ肆拾 ページ42

Aside

時は流れ、夜。

涙くんを自室に戻らせた私は、人虎捕獲についての資料を作成していた。

龍くんへの贈答品は、いまだに渡せていない。

如何やって渡そうか等、余計な考えが頭をよぎって、気付けばこんな時間になっていた。

「……如何しよう。」

今更行くのもなんだかなぁ……

などと思ってると、扉が突然ノックされた。

……涙くんかな?

「開いてるよ〜」

入って来た人物を見て、柄にもなく驚いた。

「龍くん……」

「先刻ぶりだな、A。」

咄嗟に贈答品を隠し、何事もなかったかのようにする。

すると、

「……くれるの?何で?」

龍くんが無言で紙袋を渡してきた。

「特に意味はない。」

可愛らしい紙袋に入っていたのは、フード付きの白パーカー。

先刻(さっき)外套を貰った涙くんは、こんな心情だったのか。

確かに言葉が出なくなる。

この感覚は、少しだけ懐かしかった。

白パーカーを無言で見詰めていると、

「……気に入らなかったか?」

龍くんがそう聞いてきたので、堪えきれずに笑ってしまった。

私は唯の意地悪だったけど、龍くんは本気で不安がってるんだろうなぁ。

あんまり意地悪するのも良くないと思った私は、

「嬉しいよ……本当に。」

素直な気持ちを言葉にした。

「な〜んだ。色々考えて、損しちゃった。」

龍くんがその言葉の意味を理解する前に、紙袋を取り出す。

……太宰サンから貰ったやつの方が良いとか云われたら、如何しよう。

急にそんな不安が胸に広がる。

「太宰サンのが良いって云うなら、使わなくたって良いんだよ?」

そんな不安を紛らわすために思わずそう云ってしまい、後悔した……が、

「いや……大切に使う。」

杞憂だったようだ。

「よかったら、着てみてよ。」

タグを切るための鋏を渡し乍云う。

「嗚呼。」

タグを切った龍くんは、早速着てくれる。

「おぉ!似合ってる!」

「そうか?」

「うん!着心地は如何?」

「悪くない。」

「よかったぁ!」

あ、そう云えば……

「樋口ちゃんは喜んでくれた?」

答えは知っているが、一応確認。

「多分な。」

なんか、微妙な答えだなぁ〜

……失神でもしたのかな?

まぁ、いいや。

「なら、よかった。」

鋏を片付けながらそう云うと、

「待て。」

と、龍くんに止められた。

「えっ?」

鋏を手にしたまま、龍くんの方に向き直る。

……なんか、厭な予感がする。

「Aは、着ないのか?」

ほらね。

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舞花 ひめ(プロフ) - 櫻色華伝さん» コメント有難う御座います!涙香くん、可愛いですよね!私もデレデレしながら書いてます(( これからも頑張って更新させて頂くので、これからも宜しくお願い致します。 (2020年1月8日 10時) (レス) id: 56c3681e86 (このIDを非表示/違反報告)
櫻色華伝(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!夢主(私は累-かさね-ちゃんとしてます)LOVEの涙香くん可愛すぎる!応援してます。更新頑張ってください! (2020年1月7日 15時) (レス) id: bb11e6ace8 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!頑張って更新させて頂くので、楽しんで頂ければ幸いです!▼とあるヰ琉兎さんも、頑張って下さい!応援してます! (2019年4月3日 22時) (レス) id: 95f7a369ce (このIDを非表示/違反報告)
▼とあるヰ琉兎(プロフ) - 首領の意味深な発言や芥川との関係が良かったです!!この先どう進んでいくか気になります。更新楽しみにしてます!!これからも、応援してます(´ω`*) (2019年4月3日 21時) (レス) id: ff0f774975 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年3月1日 7時

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