其ノ拾壱 ページ12
Noside
「ひ……!!」
樋口は、恐怖に体が竦む。
「何をしている樋口!」
だが、虎の牙が樋口に届く寸前で──
「『羅生門・顎』」
黒い刃面が空間に出現し、虎の巨体を前後に二つに切断する。
「ち……生け捕りの筈が。」
然し──二つに切断された虎の巨体は次第に透明になり、消えてしまう。
「!」
周囲にはいつの間にか雪が舞っている。
「『細雪』……!」
見れば、瀕死の谷崎が、それでも不敵な目で、芥川を毅然と見ている。
「今切り裂いた虎は虚像か!では──!!」
芥川の背後に、実体の虎が現れる。
「『羅生門・叢』……!」
これまで以上に巨大な手の塊となった羅生門が、虎に襲い掛かる。
それに対し、虎は正面から、其の黒い手に向かっていく。
凄まじい異能力同士が激突しようとしたその時──
「はぁーい、そこまでー」
どこからともなく現れた太宰が、いきなり両者の中央に立ちはだかる。
太宰は両手を水平に上げ、其の掌で両者の突進を遮ろうとする。
実際、太宰の指先に触れた瞬間──
羅生門も、虎の巨体も、瞬間に消失してしまう。
「なッ……」
気を失って倒れる敦。
「なっ……」
「貴方、探偵社の……!何故ここに?」
「美人さんの行動が気になっちゃう質でね……
こっそり聞かせて貰ってた。」
小型の機械とヘッドフォンを見せる太宰。
「な……真逆!」
慌てて樋口がポケットを探ると、盗聴器があった。
樋口は、探偵社で太宰に手をとられた時の事を思い出す。
「……あの時に。
では最初から、私の計画を見抜いて──」
「そゆこと。
ほらほら起きなさい敦君。
三人も負ぶって帰るの厭だよ、私。」
敦を揺さぶり始める太宰。
「ま……生きて返す訳には──」
「くく……くくく。
止めろ樋口、お前では勝てぬ。」
「芥川先輩!でも!」
「太宰さん、今回は退きましょう……
しかし、人虎の首は必ず、僕らマフィアが頂く。」
「なんで?」
「簡単な事。その人虎には……
闇市で七十億の懸賞金が懸かっている。
裏社会を牛耳って余りある額だ。」
「へえ!それは景気の良い話だね。」
「探偵社には
その時、素直に七十億を渡すなら善し。
渡さぬなら──」
「戦争かい?探偵社と?
良いねぇ、元気で。」
太宰はこれまでになく不敵な笑みで芥川を見据える。
「やってみ給えよ……やれるものなら。」
「………………」
芥川は、無言で太宰を見つめ返す。
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舞花 ひめ(プロフ) - 櫻色華伝さん» コメント有難う御座います!涙香くん、可愛いですよね!私もデレデレしながら書いてます(( これからも頑張って更新させて頂くので、これからも宜しくお願い致します。 (2020年1月8日 10時) (レス) id: 56c3681e86 (このIDを非表示/違反報告)
櫻色華伝(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!夢主(私は累-かさね-ちゃんとしてます)LOVEの涙香くん可愛すぎる!応援してます。更新頑張ってください! (2020年1月7日 15時) (レス) id: bb11e6ace8 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!頑張って更新させて頂くので、楽しんで頂ければ幸いです!▼とあるヰ琉兎さんも、頑張って下さい!応援してます! (2019年4月3日 22時) (レス) id: 95f7a369ce (このIDを非表示/違反報告)
▼とあるヰ琉兎(プロフ) - 首領の意味深な発言や芥川との関係が良かったです!!この先どう進んでいくか気になります。更新楽しみにしてます!!これからも、応援してます(´ω`*) (2019年4月3日 21時) (レス) id: ff0f774975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年3月1日 7時