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其ノ参拾陸 ページ38

Noside

Aの背中が見えなくなった後……

芥川は反対方向に歩き出した。

暫くして、人気の無い道になると、

「樋口!」

普段よりも低い声で自らの部下の名を呼ぶ。

「は、はい!」

普段の癖で、樋口は素直に返事をしてしまった。

芥川がゆっくりと振り返り、目が合ったところで樋口は自分の失態に気が付く。

冷えた汗が一筋流れる。

「樋口……」

「(叱責される!)」

そう思って、樋口は覚悟を決めた。

のだが……

「何をしている?」

「へっ?」

予想していたような怒声は飛んでこなかった。

「着いて来い……付き合え。」

上司かつ、想い人からの思わぬ言葉に、樋口は頬を緩ませ、

「はい!」

何時もより高いトーンで返事をした。

芥川と樋口が来たのは、小洒落た服屋。

小道を抜けた処にあり、隠れ家的な雰囲気がある。

樋口は、思わず言葉を失った。

素朴な可愛らしいお店……

とても指名手配犯……芥川が来る店とは思えない。

「樋口に頼みたいことがある。」

「な、何でしょう?」

「この店で、買ってきてほしい物がある。」

「はい……」

確かに、指名手配犯である芥川がマフィアの傘下ではないこの店で買い物をするのは問題だが……

こんな可愛らしいお店で、芥川は何を買う心算なのだろうか?

「それで、芥川先輩。何を買ってくれば良いんですか?」

「……フードのついた白パーカーだ。」

フード付きの白パーカー。

其のアイテムから連想される人物はたった一人……

「Aさんに……ですか?」

「嗚呼。」

Aさんに贈答品か……

と落ち込み乍らも、樋口は上司の命を成し遂げた。

シンプルなデザインで、ポケットが機能的な役割を果たしている。

Aのことをよく知らない樋口も、確かにAが気に入りそうなパーカーだと思った。

Aへのプレゼントとして、これ程最適な物は無いだろう。

そして、芥川が迷い無くこの店に来たと云うことは、事前にこの店について調べていたと云うことだ。

この事実が樋口に重くのしかかる。

ため息をついて、店を出る。

外で待っていた芥川に紙袋を手渡そうとした時……

樋口の携帯が鳴った。

「失礼します。」

画面を見ると、知らない番号。

「はい、樋口です。」

『黒岩……黒岩涙香だ。』

「えっ?何故私の番号を……」

『簡単に云えば異能力だ。説明は、後でする。』

涙香は、尾行がバレたことと、Aが芥川に贈答品を買ったことを話した。

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舞花 ひめ(プロフ) - 櫻色華伝さん» コメント有難う御座います!涙香くん、可愛いですよね!私もデレデレしながら書いてます(( これからも頑張って更新させて頂くので、これからも宜しくお願い致します。 (2020年1月8日 10時) (レス) id: 56c3681e86 (このIDを非表示/違反報告)
櫻色華伝(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!夢主(私は累-かさね-ちゃんとしてます)LOVEの涙香くん可愛すぎる!応援してます。更新頑張ってください! (2020年1月7日 15時) (レス) id: bb11e6ace8 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!頑張って更新させて頂くので、楽しんで頂ければ幸いです!▼とあるヰ琉兎さんも、頑張って下さい!応援してます! (2019年4月3日 22時) (レス) id: 95f7a369ce (このIDを非表示/違反報告)
▼とあるヰ琉兎(プロフ) - 首領の意味深な発言や芥川との関係が良かったです!!この先どう進んでいくか気になります。更新楽しみにしてます!!これからも、応援してます(´ω`*) (2019年4月3日 21時) (レス) id: ff0f774975 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年3月1日 7時

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