6 ページ6
青side
赤「ここが俺のへや〜！」
そう言って広い個室に案内される。
少しだけ開けられた窓から通り抜けていく風は夕方になっても温くて。
ベッドの中に潜り込んだしげは、相変わらず可愛らしくて整った顔の作りをしている。
アイドルとかにおりそう、そんな感じ。
青「しげってお金持ちなん？」
赤「へ？」
青「個室って高いんちゃう？淳太の実家はお金持ちやし。ちょっとの入院やのに、贅沢なんやな〜って」
赤「あー、えっと」
しげが何かを言いよどむ。
同い年の男が入院する理由なんて骨折か、風邪を拗らせて肺炎かくらいのものだろうと予想していたため、キャラメルみたいな声から紡がれた言葉に、俺は思わず絶句してしまうことになる。
赤「俺な、生まれてから今まで外に出たことないねん」
青「……は、え？そんなに悪いん？」
赤「んー、そんなことないんやけどなあ。生まれた時からずっと病院暮らしなんよ。やから、学校とか行ったことないねん」
へらへら笑っているけど、その言葉は重すぎて、どう返したらいいか分からない。
学校に行ったことない、なんて。
学校に行くのが当たり前だと思っていたから、それが当たり前じゃないことにすごく驚いてしまって。
長いまつげに縁取られた目に、暗い光が宿った気がした。
青「……なんか、ごめん」
赤「流星はなんも悪いことしてへんやん！そんな悲しい顔せえへんで？」
たとえば、喘息で体育の授業を休まなくてはいけないとか、日光に直接肌を晒すと湿疹が出てきてしまうとか、そういうクラスメイトに対面したことはある。
けれど、それはあくまで学校の「中」での話や。
学校に通うどころか、外に出たことがないと言って笑う幼い笑顔は、同い年には見えない程の憂いを帯びていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 225人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りく | 作成日時：2023年2月14日 22時
