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突然、針の怪物が身を捩った。獣が吠えるように体を震わせたかと思えば、左右の肩の突起がロケットランチャーのように飛び出した。
管で繋がれた針が、それぞれもう1体の怪物と男目掛けて飛んでいく。
距離が近く、両手を塞がれていたせいで反応できなかったのだろう。大柄の怪物の肩に、片方の針が突き刺さった。
「…ぐ、ッ!」
何故かその場に崩れ落ちた同級生に驚く間もなく、次の瞬間には怪物同士が引き離されていた。
彼の側まで戻ったそれが見上げる先には、棘の怪物を後ろから抑え込む、新たな怪物の姿があった。
「仗助、大事無いか」
「…っス。何か、急にすげェ眠くなっただけで、やべー感じはしねェんで」
「なるほどな。大体のことは読めたぜ。…問題は、だ」
新しい1体は、おそらく男が呼び出したのだろうと予想がつく。
瞬きもできない間に、自分に向けられた針を払いのけ、もう一方の針も抜いて怪物を退げ、根源の動きを止めに入らせたのだ。
男がゆっくりと近付いてくる。
今すぐにでも逃げ出したいのに、金縛りにでもあったみたいに体が動かない。
「スタンド攻撃をやめろ。でなければ、俺は正当防衛ってやつに出なけりゃあならなくなる」
「スタンド…?」
「そいつらのことさ。特にその針の奴は、君の精神が生み出した、君のスタンドだ」
「そんなこと、言われても…」
「できるはずだぜ。やり方なんて知らなくてもな」
有無を言わせずに促されて、Aは恐る恐る怪物……スタンドを見上げた。
従うしかないことだけは、分かっていたから。
色素の薄い目がじっとこちらを見つめている。歯の根がかみ合わなくて、舌がもつれそうだったけれど、Aはなんとか口を動かした。
「…誰も攻撃しないで。大人しく、してて」
抵抗を辞めた針のスタンドは男のスタンドから離れて、そっとAの隣に寄り添った。
◇◇
「…とまあ、ざっとこんな感じだ」
男の名前は空条承太郎、東方仗助の親戚だという。
向かいのソファに座ったおかげで目線が近くなると、帽子の影になる顔がさっきよりもよく見える。
言われてみれば、異国の血を感じさせる顔立ちは、確かにリーゼントの彼とよく似ていた。
スタンドとは何かを説明した彼が、理解度を測るようにAを見やる。
Aはただ小さく頷いた。
これが理解できたということなのかいまいち自覚はないが、言われたことはきちんと頭の中で整理ができている。
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時