【ジョジョ4部】蠱惑的インクルージョン (ページ37)

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対面のソファーから移動して、彼の隣に座り直す。
できるだけ精度を上げるために、刺された場所を見せてもらった。右肘の内側辺りに、血の跡が残っている。

レイヴィング・ナイト、とスタンドの名前を呼ぶ。
自分から進んでスタンド能力を使うのは初めてだ。

「東方くんの酩酊状態を楽にしたいの。体じゃなくて、感覚を眠らせて」
「優しく頼んますね、ナースさん」
「からかわないでよ」
「へーい、患者は大人しくしてまスよ」

腕を捲った仗助が本当に酔っ払いのようなことを言うので、つい言い返してしまった。
彼の体勢といい、スタンドに説明している様といい、確かに病院みたいだと思ったのは内緒だ。

雑念をできるだけ遠ざけて、手のひらを翳す。Aの動きとリンクして、レイヴィング・ナイトの爪が仗助の腕に触れた。

「痛くない？」
「チクッとするくらいだぜ。前刺されたときもそうだったが、こいつの爪、あんま痛くねーんだよな」

爪の用途が物理的な攻撃ではないからだろうか。そういえばAも何かと首を刺されているが、痛みを覚えたことはない。

スタンドのコントロールといってもコンピュータゲームのような操作が必要なわけでもなく、Aにできるのはひたすら念じることだった。
最初の指示で効果が確定していればいいのだが、なにぶん初めてなので念には念を入れておく。

スタンドの手元にばかり集中していたから、仗助の上体がぐらりと揺らいだときに反応が遅れた。

左側からのしかかってきた重みに声を上げる間もなく、倒れないように踏ん張ることが精一杯だった。

「あれ、眠くなっちゃった…！？」
「いーや。そのへんは問題ないぜ。ただ、ここまで戻ってくんのにけっこう限界だったっつーか、気ィぬいたら酔いがまわってきたっつーか…」

視界の左3分の1が彼の髪で埋まっている。仗助はAの肩に寄りかかる体勢に落ち着いたらしい。

Aの力を解決策として安心してくれたことに喜べばいいのか、いくら患者役とはいえもうちょっと離れてほしいと言うべきか。答えがまとまらなくて動けない。

「ぁ…、A。そーいやおめー、おふくろさんとかは…？」
「…仕事でいないよ。お母さんもお父さんも、夜遅くまで帰ってこない」
「そかぁ。いねーなら一安心だぜ。俺が隠れたせいで、Aが親から怒られるのはまじィからよォ～」