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どれだけ突飛な出来事があったとしても、いつものように朝が巡ってくるのは不思議な気分だ。
普段と変わらず、しんとしている家にほっと息を吐く。母親は早くから仕事に出かけているし、父親が起き出すのはまだ先だ。
昨日作っておいた惣菜がなくなっている。
忙しさにかまけて食事を疎かにしがちな母がちゃんと食べていることを確認して、自分のものと一緒に父の朝食も用意する。
制服のリボンが曲がっていないか鏡でチェックしてから、Aは玄関の扉を押し開けた。
直後、思わず叫びそうになった。
「ん!はよっス」
家の門の前に、東方仗助が立っていたからだ。
タイミングを見計らってこちらから出向くつもりでいたのに、彼の方から、しかも朝一でやってくるなんて想像もしていなかった。
一切の乱れなく整えられた髪の下で、瞳が微かに笑みの形を作った。
「…おはよう。今日も髪型、ばっちりなんだね」
「どーも。そっちこそ、今日は大丈夫みてーだな」
「?」
「スタンド。ちゃんと引っ込められてる」
心の準備ができていなかったせいで、頭が真っ白になっていた。
とっさに思ったことを口にすると、今度は彼は分かりやすく笑顔になった。
次いで指摘されたことを理解するのには、ほんの少し時間がかかった。
ぱっと後ろを振り返る。当たり前だが、玄関口には誰もいない。
「まさかそれを確かめに、わざわざ?」
「まーな」
くいっと顎をしゃくって仗助が歩き出す。
通学路が全く同じなので、誘われずともAは着いて行くしかない。
「昨日はちゃんと寝れたかよ」
「…そうだね、それなりに」
「そんならいいんだけどよ。承太郎さんの話聞いてるとき、あんたマジにビビってたろ?」
「うん。でも下手に濁されないで良かったと思う。話で聞くより、もっと酷いことになってたかもしれないでしょう」
「分かってんなら何よりだぜ」
「私あのとき気が動転してて、満足にご挨拶もできなくて…。その…いろいろとすみませんでしたって、伝えてもらってもいい?」
「おー。けどあんまし気にすることもねーと思うぜ。あの人、この町のスタンド使いについてあれこれ調べてる途中っつーか、元々俺んとこ訪ねてくるつもりだったみてーだし」
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時