【ジョジョ4部】蠱惑的インクルージョン (ページ34)

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何だ、このむず痒さは。下の名前を呼ばれたのが新鮮なのだろうか。それにしては心臓が浮かれ気味だ。

女子に名前を呼ばれるのは慣れているはずなのに、と億泰が聞いたらハンカチを噛みそうなことを思う。

「もしかして、空条承太郎さんもジョースターさんのご家族ですか？」
「承太郎はわしの孫じゃよ。あいつのことも知っておったか」
「えっと…少しお世話になりまして」
「話しちまって大丈夫だぜ。元々スタンド絡みの用事で日本に来てんだ。この人も、ついでにその赤ん坊もスタンド使いだしよ」
「えっ」

Aにとっては仗助の家庭環境より衝撃的なことらしい。
目をまん丸にする彼女に、大して驚くこともなかったジョセフが母親を探していることを教えている。
元々、せっかくならこの子に出会った辺りを歩きたいというのがジョセフの要望だった。

それらしい情報がないか気にかけてみると、Aは快く頷いてくれた。

彼女がベンチから立ち上がったのを見て、ふと我に帰る。随分と引き止めてしまった。

「時間食わせちまったな」
「大丈夫。これから帰るところだから」
「送るぜ？」
「気持ちだけで充分だよ。ジョースターさんと一緒にいてあげて」

うろうろするなと怒鳴るところを見られているから、そう言われてしまうと何も言えない。

バス停へ歩いていく彼女を見送ってから、ジョセフもゆっくり立ち上がった。自然と手が出て、彼を支える。

「いい子じゃったなぁ。立派な友達がたくさんおって、わしも嬉しいよ」
「小っ恥ずかしいこと言ってねーで、さっさと行きまスよ」

機嫌のいいジョセフの腕の中で、赤ん坊もあぶあぶとご機嫌だ。
そういえば用事は済んだらしかったが、Aは何をしに来ていたのだろう。

「なァ、Aとどんなこと話してたんスか」
「そうじゃのぉ。この町の名物とか、最近の天気とか……そうそう、あの子は本屋の帰りだと言っておったよ。確か、ロハン…岸辺露伴とかいう漫画家の本を見に行ったとか何とか」
「はァ！？露伴！？」
「日本のコミックは面白いからなぁ。英語版があるならわしも集めてみようか」

思い返せば昼休み、Aは康一と露伴の話をしていたような。
彼も露伴の所業には苦笑いしつつ、それでも漫画は面白いんだよと言っていた。Aは「よく知らないのに決めつけるのも良くないよね」という趣旨の返答をしていたが、それで加害者(と言っても過言ではないはずだ)の本を買いに行くとは。

「グレートだぜ…」