トロイの馬 (ページ4)

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樹くんはよくお金が無いと言う。私と付き合う前はどこでも奢ってくれたし、欲しいものがあれば内緒で買ってくれたりもした。今では逆だけど。

「ちょっと煙草買ってくるわ。Aはなんかいる？」
「んー、アイス食べたいな。」
「おっけー、いつものでいいっしょ？」

流れるように千円札を渡し玄関で彼を見送る。昨日渡した二千円はどこに消えたの？なんて。

「吸いすぎには注意してね、心配になっちゃう」

出会った頃から変えていない甘えた声でその華奢な背中に喋りかける。わかってるって、と反抗期の子供みたいな声と言葉を返された。

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彼が階段を降りる音を聞き、すっと口角を下げる。

玄関には樹くんから貰ったアクセサリーが置かれている。どれも女の子が好きなデザインで貰って嬉しくない女などいないだろう。柄にもなく喜んだのを覚えている。本当に嬉しかった。私のためにそこまでしてくれる彼を愛おしくも思った。

でもさ、樹くん。きっと他の女の子から金を巻き上げて素敵なプレゼンを買ってくれてたんだね。今は私の番ってことだもんね。

「その金、誰のだったの」

部屋の中心、そっと呟いた。

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