5 ページ23
･
森本じゃない、って悲しそうな顔。森本じゃんアンタって思ったけど、少し悩んで、「慎ちゃん、」って聞こえるか聞こえないかの小さな声で名前を呼んだ。そんな風に呼ぶのはもう何年ぶりのことだろ。
「うん、なに？」
「……慎ちゃんが私のこと嫌いだから、私も嫌いになってやろうって」
「……え、まじでなにそれ。知らない。は？」
「ほら、また怖い顔してる」
「もう癖、それは。Aのこと嫌いって？なんで？」
「………虫投げるし、」
「やったわ…」
「ブスに触ると体が腐るから近寄るな、って」
「………言ったわ。ガキの頃の俺最悪、…ごめん。土下座する」
そう言って座り込む彼を慌てて止めた。納得いかない顔で「どうしたら許してくれる？」って聞かれるけど、許すも許さないもない。私のことを嫌いな慎太郎が嫌だっただけで、嫌いじゃないならそれでいいんだもん。
「………もう絶対近寄るなって言わないで」
「うん。」
「あと、……前みたいにたまに一緒に帰りたい、かも」
前、だなんて。何年前の話をしてるんだろ。それでも彼は驚いた後に「毎日一緒でもいいんだけど」なんて当たり前みたいに微笑んだ。手を繋いで帰る、なんていつぶりなんだろう。私と変わらなかった背丈に、可愛らしかった顔つき、今では面影だけを残して大きく変わった。知ってるはずなのに知らない人、みたいなのは私が彼を遠ざけていたから当たり前なんだけど。
「………嫌がんねーの？」
繋がれた手をぶらぶらと揺らしながら、心配そうな声色で聞いてくる。改めて聞かれると恥ずかしくて、繋がれた手を離したくなってしまう。でももう意地をはるのはやめよう、慎太郎の手をぎゅーっと力いっぱいにぎりしめる。
「………嫌じゃないし、」
そう呟けば嬉しそうに笑う。握られた手の温かさとその笑顔で、悔しいけど思い出す。慎太郎の隣の居心地の良さも、楽しかった思い出も、好きって気持ちも。単純すぎる。
「てかさ！相変わらず運動神経ないな、まじで怖かった。あの素振り！」
「見ないでよ、ばか」
「いちごミルク好きなのも変わってないし、ほぼ毎回同じの飲んでるもんな」
「………どんだけみてんの」
「ずっと。Aが俺の事嫌な顔で見るようになってからずっとだよ、悪いか」
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1551人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たろたろ - もう殿堂入りのお話です！大好きすぎる、、 (2023年3月11日 9時) (
レス) @page24 id: 2b642d3f07 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - KaNaaaaさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！きゅんが提供できたなら私もうれしいです…( ¨̮ )♡ (2022年3月11日 19時) (レス) id: d8cb6056f0 (このIDを非表示/違反報告)
KaNaaaa(プロフ) - 何回読んでも毎回キュンキュンします！ (2022年3月8日 0時) (レス) @page24 id: 0ab49d4c18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ
| 作成日時：2022年1月30日 11時
