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「…私だって好きだし、」
「え?なんすか」
「……むかつく」
「うわ、かわいい(笑)」
「聞こえてるくせに聞こえないふりすんのやめな、腹立つから」
「まじで聞こえなかったんですって。なに?Aさん」
ねぇ、振り返った蓮と視線が合う。なんとなく目を逸らすと息を吐くように蓮が笑った。…年下のくせにいつも余裕がある、私ばっかりいっぱいいっぱいな気がして。…まさしく、釣り合いなんてものとれてないんだ。
「……私ばっかり、好きな気がする」
独り言みたいな言葉、蓮がなんにも反応しないから聞こえなかったんだと思ったのに。
「は?」
怒ったような声色、強く引かれて倒れ込む体。痛くはなかった。蓮にすっぽり包まれていたから。
「あんた、俺より馬鹿じゃないすか?」
「蓮より馬鹿なわけないじゃん、」
「そういうのじゃなくて、…あー。まじで引く」
頬を両手で包まれて、ギューッと寄せられた。痛くは無い、ただ間抜けな顔をしていると思う。ぜったい。
「れん、やめてよ」
「…Aさんが意味わかんないこと言うからじゃないっすか、」
「だって、いつも蓮だけ余裕そうで、」
「余裕なんてない。今だって、離してやりたくないんだけど」
「……れん」
「嫌がられてもくっついてていいわけ?警戒するじゃん、Aさん。」
寄せられて間抜けな顔のまま、何度も音を立てて唇を啄むように口付けられる。
「れん、ねぇ。離れてよ」
「やだって。絶対離れない、俺のこと信じられるまでこうしてるから」
「…信じた、信じたから」
顔を隠すように蓮の胸に埋もれると、優しい手の温もりが頭を撫でる。壊れ物でも扱ってる、そのくらい蓮の手が優しくて。
「…俺、割と我慢してる方だと思いますよ」
「なにを?」
「Aさん、意地っ張りなのに寂しがり屋だから。かまわれると拒否するし」
「………はずかしい、んだよ」
「それは知ってるって。触りたいの我慢してんの、わかります?」
「………ばか」
「馬鹿っすよ、俺」
とん、とん、と規則正しく叩かれるせなか。どちらが年上かわからない。
「伝わってないなら俺が悪いっすね。」
「…伝わったよ」
「そ?単純だなー、Aさんかわいー(笑)」
軽口を叩きながら、嬉しそうな声色で名前を呼ばれる。それだけでもういいや、ってなるんだよ。私の方が好きじゃない?なんて聞いたらまた蓮は怒るだろうな。
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作者名:まめこ | 作成日時:2022年9月17日 0時